2011 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母におけるゲノム工学技術の開発とゲノムエボリューション
Project/Area Number |
23780080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 峰崇 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80379130)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 染色体分断 / ゲノム / エボリューション / 育種 / 循環型社会 |
Research Abstract |
本研究では、独自に開発したゲノム工学技術を用いて、細胞の多様な特性を生み出す原動力となる染色体の部分重複および部分欠失をゲノムワイドにシステマティックに誘導し、染色体の部分異数性と細胞特性の関連を解析することを目的とした。 染色体の部分重複実験については、染色体部分重複技術を確立し、第2番、4番、7番、8番、10番、13番、14番、15番、16番染色体の約200 kb毎の重複についてそれぞれ終了した。染色体の部分異数性が付与するさまざまな細胞特性について調べたところ、第13番染色体[200 kb - 400kb]の重複はエタノールストレス耐性を示すことを見出した。第16番染色体[1 bp - 200kb]、[600 kb - 800kb]および[800 kb - 948 kb]の重複は硫酸ストレス耐性を示すことを見出した。第15番染色体[1 bp - 200kb]の重複は高温ストレス耐性を誘導した。一方、染色体の部分欠失実験については、直接欠失法では二倍体細胞において偽陽性が多く出現し部分欠失株構築のスピードを著しく低下させたことから、バックアッププランである染色体分断技術による欠失領域のミニ染色体化とミニ染色体の脱落による部分欠失構築法に切り替え、第9番、15番、16番染色体に約200 kb毎の欠失を導入した株をそれぞれ構築した。一倍体細胞を用いた欠失実験からは、データベースからは予想できない新たな合成致死や機能重複のある遺伝子群の探索と解析を可能とするデータを得た。酵母のエタノールや酸、高温ストレス耐性化は循環型社会を目指したバイオマスからの基幹化合物の生産の効率化に重要となることから、本研究からゲノム工学的アプローチによるこれまでにない新たな微生物育種法が確立できれば、バイオによる循環型社会の構築を一層進展させると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
染色体の部分重複法については首尾よく確立できたが、部分欠失法では、部分欠失の候補株は多数得られるものの、二倍体細胞を使用していることから、当初は導入した欠失誘導用断片のターゲティング効率が低下し偽陽性が予想以上に多数出現した。そのため、構築が少し遅れたが、バックアッププランとして用意しておいた染色体の分断技術による欠失領域のミニ染色体化とその後のミニ染色体の脱落による部分欠失構築法に切り替えることにより効率よく構築できている。細胞特性の解析からは特定の形質に正の効果をもたらす領域の同定も順調に進んでいることから、次年度中に遅れを取り戻することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、部分重複・欠失株の構築と酵母の生育や産業的に重要な形質である高温ストレス耐性、低温ストレス耐性、高浸透圧・高糖濃度ストレス耐性、酸ストレス耐性やエタノール生産性などを引き続き網羅的に評価する予定である。そして、産業的に有用な上記の形質に正の効果をもたらすと同定された領域を組み合わせその相乗効果についての検討を進め、ゲノム工学的アプローチによるこれまでにない新たな微生物育種法の確立を目指す。また、染色体の部分重複・欠失による細胞特性変化の因果関係をゲノム工学的手法や分子生物学的手法を用いて解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が3,767円生じたが、これは、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。次年度は、上記した研究の進展のために必要な理科学機器、PCRによる重複・欠失誘導断片調製のためのオリゴヌクレオチドプライマー、PCR複製酵素やエタノール測定試薬などを購入する予定である。
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