2011 Fiscal Year Research-status Report
質的・量的フェノロジーが東南アジア熱帯季節林の水・炭素交換に及ぼす影響の解明
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23780161
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉藤 奈津子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教務補佐員 (80514223)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 熱帯林 / フェノロジー / 炭素 / 蒸散 / 光合成 / 東南アジア |
Research Abstract |
雨期乾季の明瞭な東南アジアの熱帯季節林において、群落スケールの炭素同化量・蒸散量の季節変化に対し、光合成・蒸散器官である葉量の変化という量的フェノロジーや、個葉の光合成能力や蒸散特性の季節変化という質的フェノロジーが、どのような影響を与えているのかを把握するため、常緑性・落葉性の両タイプの森林サイトにおいて、(1)樹冠上熱・水・炭素フラックスの連続計測、(2)LAIの季節変化のモニタリング、(3)個葉の光合成特性の関わるパラメータの計測、を実施した。落葉性熱帯季節林(チーク人工林)において、展葉によるLAIの増加に伴って純生態系生産量や蒸散量は増加したが、いずれも落葉によるLAIの低下開始よりも前に徐々に低下することがわかった。このとき、樹冠部の葉の窒素量や最大電子伝達速度はまだ低下しておらず、葉の光合成能力の低下によって光合成量や蒸散量が低下し始めたのではないことが示唆された。一方、土壌水分の低下に伴い群落コンダクタンスが低下していた。以上のことから、この落葉性チーク人工林では、雨期の終わりから乾期始めにかけて純生態系生産量や蒸散量が低下し始めるが、こうした初期の低下は、落葉によるLAIの低下や葉の光合成能力の低下によるものではなく、土壌の乾燥に伴う気孔コンダクタンスの低下によって促されている、ということがわかった。このことは、雨期乾期が明瞭で水分環境の季節変化が大きいこの森林サイトでは、水分条件の季節変化とそれに対する植生の生理的応答が、蒸散量や炭素収支の季節変化において重要な制御要因となっていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた計測を開始、継続中であり、さらに、取得データの整理・解析も進行中であるので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に開始した測定を継続して複数年のデータを蓄積し、各測定項目の季節変化の普遍性と年々変動を把握する。熱帯季節林の炭素・水フラックスの季節変化に対する質的・量的フェノロジーの影響について、落葉林サイトに関して引き続き解析を進めるとともに、常緑林サイトについてもデータ整理や解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、調査地への旅費、サンプル処理のための謝金、計測・分析に必要な物品の購入やその他の費用、成果発表のための謝金・旅費・その他費用、に使用する。22年度の予算に残額が出たのは、当初、予算の3割が削られる可能性があったためであり、サンプル処理とそのための謝金の執行が一部遅れているためである。22年度の繰越分は、予定通り、残りのサンプル処理にかかる謝金に充てる。
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Research Products
(1 results)