2012 Fiscal Year Research-status Report
質的・量的フェノロジーが東南アジア熱帯季節林の水・炭素交換に及ぼす影響の解明
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23780161
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉藤 奈津子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教務補佐員 (80514223)
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Keywords | 熱帯季節林 / フェノロジー / 炭素 / 蒸発散 / 光合成 / 東南アジア / タイ |
Research Abstract |
雨期乾季の明瞭な東南アジアの熱帯季節林において、群落スケールの炭素同化量・蒸散量の季節変化に対し、光合成・蒸散器官である葉量の変化という量的フェノロジーや、個葉の光合成能力や蒸散特性の季節変化という質的フェノロジーが、どのような影響を与えているのかを把握するため、常緑性・落葉性の両タイプの森林サイトにおいて、①乱流変動法による樹冠上熱・水・炭素フラックスの連続計測、②LAIの季節変化のモニタリング、③個葉の光合成特性に関わるパラメータの計測、を前年に引き続き実施した。③については、葉の定期サンプル分析に加え、落葉林サイトでは年3回の現地での個葉光合成・蒸散速度の計測を行った。 落葉性熱帯季節林(チーク人工林)では、展葉によるLAIの増加に伴って純生態系生産量や蒸散量は増加するが、展葉のタイミングは土壌水分の増加と関係があることが分かった。また、乾期の初めに、落葉によるLAI低下よりも前に純生態系生産量や蒸散量は低下するが、これは土壌水分の低下によって群落コンダクタンスが低下したためであることが、樹冠上乱流フラックスの解析から分かった。また、個葉の光合成・蒸散速度の計測からも、乾期初めには葉の光合成能力は低下していないが、気孔コンダクタンスが低下したために炭素同化速度や蒸散速度が低下したことが示された。 以上のことから、この落葉性チーク人工林では、LAIという量的フェノロジーに加え、土壌や大気の乾燥に伴う気孔コンダクタンスの低下という生理的応答が、炭素同化量や蒸散量の季節変化を形作る主要な要因になっていることが分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた計測は開始、継続中である。サンプルの分析と常緑林サイトのデータ解析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度、24年度に開始した測定を継続し、各測定項目の季節変化の普遍性と年々変動を把握する。新規性が高く面白い結果が出始めている落葉林サイトに重点をおいて、量的・質的フェノロジーと樹木の生理的応答が炭素・水フラックスの変動に及ぼす影響の解析をすすめていく。次年度は、特に現地調査・サンプルの分析に力を入れる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、調査地への旅費、サンプル処理のための謝金、計測・分析に必要な測器・物品の購入や修理・維持・その他の費用、成果発表のための謝金・旅費・その他費用、関連研究を行っている研究者との情報交換のための旅費、に使用する。 23年度の予算に残額が出たのは、サンプル処理がやや遅れておりそのための謝金の執行が一部遅れているためである。繰越分は残りのサンプル処理のための謝金にあてる。
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Research Products
(3 results)