2012 Fiscal Year Research-status Report
土壌中の形態別有機物動態を考慮にいれた森林伐採の渓流水質への影響評価法の開発
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23780166
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60390712)
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Keywords | 伐採試験 / 伐採影響 / 窒素循環 / 無機態窒素 / 窒素無機化 / 溶存有機物 / 火山灰土壌 / 渓流水質 |
Research Abstract |
本申請課題では、火山灰土壌や褐色森林土に成立する森林において、伐採(皆伐および間伐)が渓流水による窒素流出に与える影響を明らかにすることを目的として、以下の課題を行う予定である。1.様々な土壌環境に成立する森林での伐採(皆伐および間伐)が渓流水質(特に硝酸態窒素)に与える影響を明らかにする。2.伐採後の土壌中の形態別炭素・窒素量の経時的変化を明らかにする。3.褐色森林土、黒ボク土などわが国で一般的な土壌との比較から未熟黒ボク土の特徴を明らかにする。4.成果を統合し、伐採インパクトに対する応答を表現できる土壌炭素窒素動態モデルを開発するとともに、簡易な伐採インパクトに対する森林生態系の影響評価法の開発を行う。 平成24年度は、課題1に関連して、鹿児島大学高隈演習林において、2005年の伐採前から行っている皆伐流域と森林流域での渓流水質のモニタリングを引き続き行った。また課題1,2に関連して、京都大学北海道研究林において森林タイプの異なる森林において土壌中の溶存有機態炭素・窒素および無機態窒素動態を明らかにした。特に溶存有機物については、三次元蛍光解析による有機物画分の季節性に着目して解析を進めた。課題3に関連して、日本各地から採取した土壌の環境DNAを採取し、土壌窒素代謝に関連する微生物群集のメタゲノム解析を海外機関の共同研究者とともに解析を進めた。課題4に関連して、伐採試験が進行している鹿児島大学高隈演習林において、過去から現在にかけての水質データを解析し伐採インパクトの評価方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鹿児島大学高隈演習林において行ってきた伐採試験については、サンプリング頻度は減らしたが、引き続き水質モニタリングを継続している。新規伐採試験については、流域スケールでの伐採が可能な試験流域が見つからず実施が困難な状況である。しかし新たに土壌中の溶存有機態炭素・窒素の動態に関する詳細なメカニズム研究を開始したため、広域的な土壌比較の結果や実施中の伐採試験の結果などと併せて解析を行っていくことで目的を達成できると考えている。 伐採方法の比較については、当初予定していた流域スケールでの間伐試験の目途が立っていないが、既存の伐採試験や他の地域で行われた伐採試験などの成果をレビューすることで、伐採方法の違いによる影響を評価する方法を検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き鹿児島大学高隅演習林で行われている水質モニタリングを進めるとともに、京都大学北海道研究林において、土壌中の溶存有機態炭素・窒素についてのメカニズム研究を進める。また様々な土壌タイプにおける化学性の比較を引き続き行う予定である。 流域スケールでの伐採試験の実施は困難でありそうだが、新たに小面積の間伐地の伐採前後の土壌化学性の比較や伐採からの経過年数の異なる森林間の土壌化学性の比較研究などを行い伐採インパクトの評価を行う方法について検討を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上の計画を踏まえ、物品費は主に、渓流水や土壌の化学分析用の研究備品や試薬の購入に充てる。旅費は、鹿児島大学高隈演習林での野外調査と研究打ち合わせ、日本各地の土壌採取、機器分析などを行うための国内旅行費に充てる。人件費・謝金は、試料の前処理などの謝金に充てる。その他に関しては、試料の宅急便代や成果報告のための英文校閲費に充てる。50万円を超える物品の購入予定は現在のところはない。
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