2012 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミクスを用いたシャトネラ赤潮消長関連タンパク質の探索
Project/Area Number |
23780197
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
島崎 洋平 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40363329)
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Keywords | シャトネラ / プロテオミクス / 光合成活性 / peroxidoredoxin |
Research Abstract |
本課題では有害藻類シャトネラの赤潮消長予測を目的として、光合成に関連したタンパク質の発現変動を指標とした細胞活力評価法の開発を目指している。本年度度は実験計画のうち、<実験3>増殖段階で変動したタンパク質の遺伝子配列解析、<実験4>実環境(有明海)におけるシャトネラ調査と細胞のサンプリング、<実験5>実環境サンプルのタンパク質・遺伝子発現解析とデータ整理・解釈を計画していた。 本年度の<実験3>に関連する成果として、室内培養株において増殖段階で変動したタンパク質である過酸化水素消去酵素peroxidoredoxinの遺伝子配列、立体構造解析を行い、さらに過酸化水素暴露による発現誘導解析を行った。その結果、シャトネラのperoxidoredoxinは他の藻類・植物の同種タンパク質と有意な相同性を有しており、また過酸化水素の暴露によりその遺伝子発現が誘導されたため、光合成の副産物として発生する有毒な過酸化水素の積極的な消去に関与していることが予想されたため、細胞活力の指標としての可能性が示唆された。<実験4>に関連する成果として、有明海で発生したシャトネラ赤潮海水中から、シャトネラ細胞の採集に成功し、細胞の光合成活性(Fv/Fm比:光化学系IIの活性の指標)、海水中の栄養塩等の分析を行った。その結果、Fv/Fm比とシャトネラ細胞の増殖との間に正の相関が観察され、赤潮消長指標としての有用性が示唆された。また、<実験5>については現在現場サンプルのタンパク質発現変動を解析中であり、H25年度も引き続き継続していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は5つのサブプロジェクト、<実験1> タンパク質群の同定解析、<実験2> 増殖段階で変動したタンパク質の短期・長期的環境変化に対する発現量挙動解析、<実験3> 増殖段階で変動したタンパク質の遺伝子配列解析、<実験4> 実環境におけるシャトネラ調査と細胞のサンプリング、<実験5> 実環境サンプルのタンパク質・遺伝子発現解析とデータ整理・解釈により構成されている。 <実験1>:H23年に終了予定であったN末端配列で解析可能な発現量があるタンパク質スポットの解析はほぼ終了した。<実験2>:解析用サンプルは取得済みであり、H25年度に解析を行う。<実験3>:H24年度はperoxidoredoxinについて解析を行った。H25年度も引き続き継続するが、特に酸素発生系のタンパク質であるoxygen evolving enhancerの配列および発現変動解析を行う。<実験4>:H24年度にシャトネラ赤潮が発生したため、解析に十分なサンプルが取得できており、H25年度も引き続き調査を行う。<実験5>:これらを総合してH25年度にシャトネラの増殖能力を評価できる分子指標の探索を行う予定である。また、現在、増殖能力を評価できるタンパク質の探索と並行して、細胞のPAM法による光合成活性(Fv/Fm比:光化学系IIの活性の指標)測定を行い、シャトネラの増殖能力評価指標としての有用性について検討を行っている。以上の理由により概ね予定通り進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
さきに述べたように、現在、増殖能力を評価できるタンパク質の探索と並行して、細胞のPAM法による光合成活性(Fv/Fm比:光化学系IIの活性の指標)測定を行い、シャトネラの増殖能力評価指標としての有用性について検討を行っている。本法は、シャトネラにおいては細胞密度がある程度以上(300 cells/ml以上)の時に安定的に測定が可能であり、また極めて簡便に測定できるため、増殖能力評価指標の一つとして有効であると考えている。また、細胞密度が低い場合は、評価分子を特定後、リアルタイムPCR等によりシャトネラの活力を評価する方法を開発していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Temporal variations in photosynthetic activity and phase-dependent cellular protein expression during growth of harmful raphidophyte Chattonella antiqua2012
Author(s)
Qiu X, Shimasaki Y, Tsuyama M, Yamada T, Honda M, Kato-Unoki Y, Nakashima T, Yamasaki Y, Honjo T, Oshima Y.
Organizer
15th International Conference on Harmful Algae
Place of Presentation
Changwon, Korea
Year and Date
20121028-20121102
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