2011 Fiscal Year Research-status Report
犬の血栓症におけるADAMTS13を用いた新規診断・治療法の確立に向けた基盤研究
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23780327
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
丸山 治彦 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (60434106)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ADAMTS13 / 犬 / 血栓症 |
Research Abstract |
平成23年度は、犬の血栓症における新規診断・治療法の確立に向けた基盤形成を目的とし、ヒトVWF73を使用した市販のELISAキットが犬の血中ADAMTS13活性測定に有用であるかウエスタンブロット法と比較検討した。 研究実績の具体的概要は以下の通りである。ADAMTS13の基質となるヒトVWF73は、N-末端にGSTタグを、C-末端にはHisタグを付加する形で発現ベクターを構築し、大腸菌BL21により発現させた後ニッケルカラムにて精製することで得た。犬ADAMTS13組換え蛋白(crADAMTS13)は、Hela細胞を用いた一過性発現系にて得た。一定量のVWF73に種々の濃度のcrADAMTS13を添加し、塩化バリウムを含むバッファー中で切断反応を行った。また、健常犬から得た種々の濃度の血漿による切断反応も併せて行った。ヒトADAMTS13により切断されたVWF73断片を認識するN10抗体および抗GST抗体を用いて、crADAMTS13によるVWF73切断産物をウエスタンブロット法にて検出した。その結果、crADAMTS13もしくは血漿の濃度が増加するに従い切断産物も増加した。すなわち、犬のADAMTS13はヒトVWF73を効率良く切断することが確認された。さらに、ウエスタンブロット法に用いた検体のADAMTS13活性をELISA法にて測定した結果、両法の間に良好な相関性が認められたことから、ウエスタンブロット法と比較してより多くの検体を同時測定可能であり、かつ操作性が簡便であるヒトVWF73を用いた市販のELISAキットを犬のADAMTS13活性測定に応用できることが明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における当初の計画では、1)ヒトADAMTS13活性測定ELISAキットの犬への応用に関する検討、ならびに2)犬ADAMTS13組換えタンパクを用いた抗ADAMTS13自己抗体検出ELISA法の開発、を完遂する予定であった。1)においては良好な結果が得られ、当初予定していた成果に十分到達したと考えている。すなわち、ウエスタンブロット法による活性測定と比較検討することによって、ヒトのADAMTS13活性測定ELISAキットを犬の血漿中ADAMTS13活性測定へ応用出来ることを明確にし、血栓症症例での臨床検討を可能とした。 一方、2)においてはELISAプレートに抗原として固相化する犬ADAMTS13組換え蛋白(crADAMTS13)をHela細胞を用いた一過性発現系では十分な量を得ることが出来なかったため、本アッセイ系の構築を一時的に中断している。この問題を解決すべく、より高発現が期待出来る発現ベクターを構築し、それを用いたCOS-7細胞によるcrADAMTS13恒常的発現細胞株を作製している。現在、数個の発現株クローンが得られており、より高発現している細胞株を得るためのスクリーニングチェックを実施しているところである。よって、近々に自己抗体検出アッセイ系の構築を再開出来ると思われ、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施予定であった犬ADAMTS13組換えタンパクを抗原として用いた抗ADAMTS13自己抗体検出ELISA法の開発において遂行の障害となっているcrADAMTS13の量的不足を解決するために、当初のHela細胞による一過性発現系から予定を変更して、COS-7細胞による恒常的発現系の作製を引続き試みる。これにより十分な量のcrADAMTS13が得られるようになれば、当初の予定通りに抗ADAMTS13自己抗体検出ELISA系の開発を実施する。 上記に加え、H23年度の研究により犬の血中ADAMTS13活性測定にヒトVWF73を用いたELISAが応用可能となったことから、実際の血栓症罹患犬における血中ADAMTS13活性測定をプロトロンビン時間や活性化部分トロンボプラスチン時間など他の止血凝固検査と平行して行い、病勢との関連性を評価することで本血中活性測定の臨床病理学的意義を見いだしていく予定である。また、血栓症により死亡した症例において、臓器中の血栓が血小板主体の一次止血血栓か、それともフィブリン主体の二次止血血栓であるか検索し、生前の血中ADAMTS13活性との関連性を検討することによって、本酵素の病態形成への関与を追究する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、前年度の研究成果を踏まえ、実際の臨床例における血中ADAMTS13活性測定を実施する。また十分量のcrADAMTS13が作製可能になった際には抗ADAMTS13自己抗体の開発も再開する予定である。 そのため平成24年度の研究費は、消耗品の購入に充当する。具体的には、ヒトADAMTS13測定用ELISAキットの購入に主として使用する予定である。また、それと併せて一般止血凝固検査試薬や、抗ADAMTS13自己抗体検出に使用する抗体試薬も購入する予定である。
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