2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化的炭素骨格構築型触媒の創出と新概念化合物合成からの創薬アプローチ
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23790007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生長 幸之助 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00583999)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 有機化学 / 有機合成 / 医薬化学 / 触媒 |
Research Abstract |
本研究提案では、環境調和性の高い直接的化学変換を実現する、酸化的炭素骨格構築型触媒の開発、およびそれを基盤とした、新規骨格を持つ医薬リード候補化合物を迅速に供給する方法論の確立を目標とする。具体的には将来像も含め下記の3段階での実行を計画している。(1) 穏和な条件下に脱水素型クロスカップリング(CDC)反応を進行させる、人工触媒の設計概念を確立する (2) (1)の触媒的CDC反応を応用し、医薬的に魅力ある合成単位を幅広く供給可能な基盤方法論を確立する (3) (2)を応用して非天然型ペプチドライブラリーを構築・応用し、耐性菌対策を始めとする医薬領域の重要課題の解決を目指す。今年度、研究代表は主に上記目的(1)の達成を目指し、CDCもしくは酸化的C-H活性化を介した炭素骨格構築法の開発に取り組んだ。とりわけ元素戦略的に有利な第一列遷移金属(銅、鉄、コバルト、マンガンなど)の酸化触媒としての積極的活用を念頭に置いた。現在までに本方針によるアプローチは、有望な結果を見せている。代表的な成功例の一つが、後述する銅触媒を用いた温和な条件下でのニトロンを用いる新規CDC反応の開発である。本反応はニトロンが求核剤として働くという過去に類を見ない結合形成様式を実現し、またこれは2種の協奏的一電子酸化から生じる求電子剤と反応するという、全く新規な機構で進行することも突き止めている。この基礎的知見をもとに合理的に設計されうる触媒群は、関連する数多の未開拓反応を進行させうる可能性を秘めており、高い発展性が見込まれる成果である。また本CDC反応は医薬化学的観点から魅力ある合成単位の一つ、新規骨格を持つ非天然型α-アミノ酸を短工程で与える手法でもあるため、上記(2)の実現に向けた基盤方法論の一つにもなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者は、目的実現に向けての道程を3段階戦略の形で設定し、今年度は主に(1)「穏和な条件下に脱水素型クロスカップリング(CDC)反応を進行させる、人工触媒の設計概念を確立する」の実現に取り組んできた。とりわけ元素戦略的に有利な第一列遷移金属(銅、鉄、コバルト、マンガンなど)を触媒として用いる、酸化的炭素骨格構築法の開拓を念頭に置いた。今年度の代表的成果としては、「銅触媒-過酸系を用いる、エーテル/アミンおよびニトロンとの新規CDC反応」が挙げられる。室温、ほぼ中性pHという温和な条件下に、エーテル/アミンα位のC-H活性化によってカチオン性中間体を生成させ、これにニトロンが求核剤として反応し炭素-炭素結合を形成するという、過去に類を見ない結合形成が実現された。またラジカルクロック実験などにより、2種の直交型一電子酸化剤が協奏的にエーテル/アミンの酸化を行うことで2電子酸化を実現するという、全く新規な反応機構で進行することも突き止めることもできた。本反応は非天然型α-アミノ酸を短工程で与える形式であり、(2)「触媒的CDC反応を応用し、医薬的に魅力ある合成単位を幅広く供給可能とする」に寄与する基盤方法論の一つにもなりうる成果である。以上の成果は、代表者をCorresponding Authorとする原著論文および解説論文として公表することができた (Hashizume, Oisaki*, Kanai* 著、Org. Lett. 2011, 13, 4288.; Chem. Rec. 2011, 11, 236. )。またこれと並行して、複数の別アプローチから(1)(2)の達成に向けて取り組んできており、こちらも原著論文として投稿可能な成果をいくつか見出すことに成功している。以上から、目標達成に向けた研究進捗は概ね良好であると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したニトロンとの触媒的CDC反応は、非天然型アミノ酸を短工程で与える魅力的な反応であるが、酸化剤として爆発性のある過酸を必要としていること、収率が多くの場合中程度にとどまっていることが現状の課題である。今後は酸化剤を酸素に代替し、また収率の向上および基質一般性の拡張に取り組むことで、より環境調和性の高い汎用触媒系へと昇華させていきたい。また目標(1)(2)の発展的展開および別角度からの達成に向け、既述の触媒設計概念を拡張し、触媒的酸化的骨格構築法を基盤とする医薬ビルディングブロックの短工程供給を目指した研究に継続的に取り組んでいく。具体的には医薬に汎用される酸化度の低い複素環や、官能基に富む複雑基質の合成終盤・保護基フリーの触媒的修飾を目指した研究にトライしていく。目標(3)の達成に向けては、今年度開発を行ったCDC触媒および並行して開発の進んでいる基礎触媒系を活用し、非天然型ペプチドライブラリーの創製に取り組む予定である。具体的には官能基選択性の達成や水系溶媒の使用が困難という、多分に触媒サイドに由来する問題から適用が忌避されていた、nativeな長鎖ペプチドにも適用可能な化学変換の実現を目指す。特に温和な条件下での酸化的骨格構築法を適用することで、直接的な構造修飾・保護基フリーのカップリングを行いうる方法論の確立を目指す。将来的には本法を用いて、医薬領域の重要問題を解決しうるような化合物リード創出を目指したい。当面はバンコマイシン耐性菌にも有効性が期待される非天然型ペプチドの探索を目標としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、今年度とほぼ同様の出費計画を考えている。今年度実績も参考にし、研究費のうち物品費を最も多額の出費として計上したい。具体的には共通機器として利用している、合成化学研究に必須となる分析機器類(核磁気共鳴装置、質量分析装置、赤外分光装置など)、真空ポンプなどの定期メンテナンス費、修理費として一部を計上する。また有機合成研究において消耗品(薬品類、溶媒、不活性ガス、ガラス器具、手袋などの保護具)は日常的に消費されるため、最も使用金額が多くなる。額面は申請者が本研究を学生二人と共に実行する限りにおいて、妥当な額だと考える。研究の達成後には、国内外での成果発信が必要となる。そのため、国内学会・国際学会出席目的の旅費として、研究費の一部を計上した。また、論文別刷・英文校閲費は研究発信過程で必須となるため、その他の項目として含めた。研究の進捗状況は概ね良好であるため、両項目は当初計画よりも増額使用することを考慮したい。
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[Presentation] Catalytic Migratory Oxidative Coupling of Nitrones2011
Author(s)
Kounosuke Oisaki, Shogo Hashizume, Motomu Kanai
Organizer
The 6th International Conference on Cutting-Edge Organic Chemistry in Asia / The 2nd New Phase International Conference on Cutting-Edge Organic Chemistry in Asia (ICCEOCA-6/ NICCEOCA-2)
Place of Presentation
The Chinese University of Hong Kong, Hong Kong, CHINA
Year and Date
December 11-15, 2011
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