2011 Fiscal Year Research-status Report
不斉有機触媒反応を鍵反応とする生物活性化合物の全合成
Project/Area Number |
23790024
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石川 勇人 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80453827)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | インフルエンザ治療薬 / タミフル / リレンザ / マイクロフロー合成 / 有機触媒 |
Research Abstract |
近年、人類にとって新型インフルエンザウィルスのパンデミックが脅威となっている。人類はこれに対抗する手段としてタミフル、リレンザといったノイラミニダーゼ阻害剤を有しているが、合成原料として天然資源を用いている点、また、薬剤耐性ウィルスに対する新規医薬品開発が容易ではないと言った問題を抱えている。本研究ではこれら医薬品の石油原料からの安定的な合成経路の開発及び、新規医薬品候補化合物の創製を目的として検討を行った。安価、安全かつ簡便な抗インフルエンザ薬タミフルの新たな供給法の開発を目指し、近年注目されているマイクロリアクターを取り入れた人工合成法を開発した。本法では爆発性が懸念されていたアジド中間体をマイクロリアクター中で単離する事なく消費するため、飛躍的に安全面が改善された。さらに、大量の有機溶媒を必要とするカラムクロマトグラフィーによる精製を必要とせず、分液操作と再結晶のみで合成する事が可能であり、総じてプロセス合成に適した方法となっている。また、鍵反応として用いている有機触媒による不斉マイケル反応に関して、精査を行ない新たな反応機構を提案すると共に添加剤の効果などについても明らかとした。これにより、新たな基質一般性が獲得され、タミフル合成においても誘導体調製が容易となる。実際に35種の誘導体を調製し、タミフル耐性インフルエンザウィルスに対する生物活性も含めた薬理試験を依頼している。また、リレンザを効率的に人工合成及び簡便に誘導体を合成可能な合成法の確立を目指し、検討を行った。その結果、本医薬品の独自に開発した手法を駆使した不斉点構築及び効率的な基本骨格の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タミフルの新規合成法の開拓を行い、工業化可能な方法へと展開する事が出来た。今回の検討ではアカデミックの研究から、実際の工業生産を視野に入れ、安全性やコスト面も大きく改良された。更に、本法を用いた誘導体合成も提案した化合物をすでに合成しており、現在35種の新規医薬品候補化合物の活性試験を行っている。現在、更なる誘導体合成も検討している。また、提案したリレンザの全合成経路の確立においても、順調に進行しており、鍵となる不斉有機触媒反応及び、ドミノ反応による基本骨格構築に成功した。現在、全合成達成に向けて続く化学修飾を行なっているが、最も困難が予想された反応が成功した事により、本プロジェクトは大きく進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
有機合成か学的視点からタミフルを1つのフラスコで合成する事は、大きなインパクトを持つと考えている。従って、現在の合成法を更に改良し、ワンポットでのタミフル合成を行なう。また、タミフル誘導体ライブラリー構築を引き続き行なう。その際、インフルエンザウィルス膜上に存在するノイラミニダーゼとタミフルの結合様式を詳細に検討し、候補化合物を提案する。また、合成した誘導体は薬理活性試験を行い、新規医薬品候補化合物の創出を目指す。リレンザ合成においては、引き続き全合成達成に向けて検討を行う。また、本合成も工業化まで視野に入れた実用性の高い合成を目指す。完了した後は引き続き誘導体合成へと展開し、生物活性試験による新規医薬品候補化合物創出を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プロジェクトの遂行に必要な反応用試薬、反応用溶媒、ガラス器具等の実験器具、成果発表のための学会参加旅費に使用する。
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