2012 Fiscal Year Annual Research Report
不斉有機触媒反応を鍵反応とする生物活性化合物の全合成
Project/Area Number |
23790024
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石川 勇人 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80453827)
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Keywords | 有機触媒 / 不斉反応 / アルカロイド / タミフル / リレンザ |
Research Abstract |
近年、人類に取って新型インフルエンザウィルスのパンデミックが脅威となっている。これに対抗する手段としてタミフル、リレンザといったノイラミニダーゼ阻害剤を有しているが、合成原料として天然資源を用いている点、薬剤耐性ウィルスに対する新規医薬品開発が容易ではないといった問題点を抱えている。本研究では安価、安全かつ薬剤耐性ウィルスのための誘導体合成が容易なタミフルの合成を行なった。種々検討を行い、タミフルをわずか1つのフラスコを反応容器とする“ワンポット合成”を達成した。総収率も36%と極めて効率的な全合成となっている。現在、昨年に引き続き誘導体合成に続く、抗ウィルス活性について検討している。また、本合成の鍵段階として用いている不斉有機触媒反応について、その反応機構を詳細に解明し、数多くの新たな知見を得る事が出来た。これは、近年爆発的に進展を見せている有機触媒反応を理論的に理解し、新たな触媒反応の開発に大きく貢献する知見である。昨年度より引き続き行なっているリレンザ合成においては、全ての炭素骨格の導入に成功した。また、今年度より植物由来モノテルペノイドインドールアルカロイド類の生合成共通中間体として注目されているインドールアルカロイド“ガイソチザール”の全合成を開始した。本化合物を合成するにあたり、2級アミン型不斉有機触媒を用いた不斉ドミノマイケル/ヘミアミナール化反応を開発した。本反応では既存の有機触媒では十分な立体選択性が観測されなかったため、新たに触媒を設計し、反応最適化を行なった。最終的に独自に開発した触媒を用いて94%と満足のいく立体選択性で目的とする化合物を得る事が出来た。現在、効率的全合成にむけて、検討中である。
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