2012 Fiscal Year Research-status Report
脳関門P糖タンパクの単分子輸送活性と発現量に基づく薬物脳移行性の病態変動の解明
Project/Area Number |
23790170
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 康雄 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70583590)
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Keywords | 病態血液脳関門 / P糖タンパク / 単分子輸送活性 / 絶対発現量 / In vivo機能の再構築 / Caveolin1 / 炎症 / Pharmacoproteomics |
Research Abstract |
H24年度は、炎症時の血液脳関門のP糖タンパク(P-gp)の絶対発現量を解明し、H23年度に解明済みの正常時のP-gpの単分子輸送活性を統合することによって、炎症時のin vivo血液脳関門のP-gp排出輸送活性及び脳への薬物移行量を再構築できるか否かを解明する事を目的とした。再構築できない場合は、P-gp単分子活性の病態変動機構を解明し、それに基づく新たな再構築法が必要である。その準備段階として、P-gp活性に影響を与えうるcaveolin1のリン酸化の定量系を構築する事を目的とした。 3 mg/kg LPS投与により炎症モデルマウスを作製し、脳毛細血管を単離してLC-MS/MSを用いてP-gpの絶対発現量を計測した結果、正常時とほぼ同程度であった。これに正常時のP-gp単分子活性と炎症マウスの血漿中・脳内非結合型分率を統合し、薬物速度論的モデルに基づきP-gp基質ベラパミルの脳/血漿中濃度比(Kp値)を再構築し、炎症モデルマウスにおける実測値と比較した結果、再構築値は実測値に比べて有意に小さく、再構築できない事が示された。つまり炎症時のP-gp単分子活性は正常時に比べて小さい事が示唆された。 Caveolin-1のリン酸化量に依存してP-gp単分子活性が変動する可能性があると考えられたため、caveolin1のリン酸化を定量すれば病態時の単分子活性を解明できると予想された。そこで、caveolin1のリン酸化部位Tyr6, Tyr14, Tyr25及びTyr42に対する定量用リン酸化ペプチドを作製し、LC-MS/MS絶対定量系を構築した。リン酸化濃縮技術HAMMOC法と組み合わせる事で、最高で20 attomole/ug proteinの発現まで定量可能な、リン酸化caveolin1の超高感度絶対定量系を確立する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度いっぱいで実施予定であった計画が平成24年度の早期に完了した。当初、0.1-1 fmol/ug protein程度のリン酸化caveolin1を定量可能な測定系の確立を目標としてきたが、HAMMOC法によるリン酸化ペプチド濃縮技術の最適化を行った結果、20 attomole/ug proteinまで検出可能な定量系を実現することができた。これにより、少なくとも0.1%のリン酸化割合まで定量可能な超高感度定量系が実現した。以上の事から、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、交付申請書に記載したとおりに推進する予定である。 平成25年度は、リン酸化Caveolin1によるP-gpの単分子活性変動機構に基づいて、病態(炎症)モデルマウスにおける脳関門P-gp輸送活性を再構築できるか否かを解明する。In vitro脳毛細血管モデル細胞に病態関連物質を暴露させ、輸送解析と発現量解析を実施し、P-gp発現量で除した見かけの基質排出輸送速度を求め、これが病態関連物質の暴露によって変化することを確認する。これと同じ病態条件下において、caveolin1のTyr6, Tyr14, Tyr25, Tyr42の中からリン酸化量の変動するリン酸化部位を同定し、単分子輸送活性に影響を与えるリン酸化部位として同定する。同定されたリン酸化部位について、P-gp発現量で除した見かけの排出輸送速度とリン酸化量の相関関係を明らかにする。得られた相関関係に、正常および病態モデルマウスにおける脳毛細血管のリン酸化量を照らして、病態モデルマウスにおける単分子輸送活性の低下率を算出する。平成23年度の研究で得られている正常時P-gpの単分子輸送活性にこの低下率を乗ずることによって、病態(炎症)時の脳関門のP-gp単分子輸送活性を得る。この値に、平成24年度の研究で示された病態(炎症)時のP-gpタンパク質発現量と蛋白質非結合型分率を統合することによって病態(炎症)時のP-gp基質の脳/血漿中濃度比(Kp値)を再構築し、Kp値の実測値と一致するか否かを明らかにする。 以上の実験によって、薬物脳移行性の病態変動メカニズムが解明され、病態時における脳への薬物移行量を予測する基盤が確立し、本研究の目的が達成される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度と同様に、平成25年度中に特に変更がなければ、研究遂行のために、交付額が年度末に0になるように計画的に使用する予定である。
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Research Products
(26 results)
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[Journal Article] Quantitative targeted absolute proteomic analysis of transporters, receptors and junction proteins for validation of human cerebral microvascular endothelial cell line hCMEC/D3 as a human blood-brain barrier model2013
Author(s)
Ohtsuki S, Ikeda C, Uchida Y, Sakamoto Y, Miller F, Glacial F, Decleves X, Scherrmann JM, Couraud PO, Kubo Y, Tachikawa M, Terasaki T
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Journal Title
Mol Pharm
Volume: 10
Pages: 289-296
DOI
Peer Reviewed
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