2013 Fiscal Year Research-status Report
組織型プラスミノゲン活性化因子とマトリックスメタロプロテアーゼの認知症での役割
Project/Area Number |
23790289
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 康裕 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00324343)
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Keywords | 血液脳関門透過性 |
Research Abstract |
マウス微小血管内皮培養細胞を用いて、低酸素・低グルコース(OGD)による虚血刺激を行ったところ、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生が誘導し、さらに組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA)によって促進されることを見出した。VEGFは、微小血管の透過性を上げ、さらに血管新生など様々な作用を有する機能タンパク質であることが知られている。そこで、VEGFに着目し、培養内皮細胞を用いてt-PAのVEGF産生のメカニズムを検討した。t-PAは特定の受容体を有しない酵素で、低密度リポタンパク質受容体ファミリー(LDLRs)と結合することが知られている。このVEGF産生上昇は、LDLRsの阻害薬で抑制され、t-PAの酵素活性を失活させた場合においても上昇を認めなかった。タンパク質レベルにおいてもmRNAと同様な結果だった。また、VEGFの内皮細胞での受容体VEGFR-2のリン酸化においても同様の結果が得られた。マウスでの中大脳動脈閉塞モデルからt-PAを脳虚血開始4時間後にt-PAに投与するとその2時間後に一過性のエバンスブルー(EB)の漏出の増大を認めた。動物モデルにおいてもt-PAによる透過性の上昇をLDLRs阻害薬が抑制し、不活化t-PAでは透過性に変化がなかった。また、VEGFR-2の阻害薬SU-1498および増殖因子受容体のリン酸化阻害薬スニチニブにおいてもt-PAによる透過性の上昇は抑制した。これらのことから、虚血4時間以上のt-PA投与によって、LDLRsに結合し内皮の活性化、VEGFの産生誘導し、その産生されたVEGFがVEGFR-2を介してBBBの透過性を上昇させたのではないかと考察した。このことは、機能タンパクが虚血下における血液脳関門を通過する可能性を示唆するメカニズムと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機能タンパクの候補としてVEGFを見出した。前年度までのt-PA遺伝子欠損マウスを用いた行動薬理学的な評価により、脳虚血後の情動障害に内因性t-PAが関与していることを発見した。また、選択的ノルアドレナリン(NE)再取り込み薬の効果の違いから、神経シナプス間隙のノルアドレナリンが関与している可能性を見出した。虚血境界領域の神経細胞におけるt-PA/Pli/MMPs/VEGF/NEの調節機構の解明と脳梗塞後の情動障害および認知機能にどの様に関わっているか研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
t-PA遺伝子欠損マウスおよび培養細胞を用いて、脳虚血後のノルアドレナリを中心としたモノアミンの変化について検討を行う。tPA/Pli/LRP/MMPs阻害あるいはVEGF阻害によってモノアミンの変化および脳虚血後の情動障害が回復するかどうか検討を行う。VEGFが虚血下における血液脳関門を通過するかどうかを電子顕微鏡など使用して検討を行い、認知機能においてこの機構が関与するか検討を行う。
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