2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790299
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
中野 大介 香川大学, 医学部, 助教 (30524178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 腎臓 / 細胞老化 |
Research Abstract |
糖尿病モデルとしてstreptozotocin(STZ: 10 mg/kg/day、一週間連続投与)により誘導した1型糖尿病モデルと、2型糖尿病自然発症モデルであるOLETFラットを用いた。STZモデルでは正常およびp21-KOマウスを用い、STZ投与開始2、4、12、24週後に、OLETFラットでは10、16、22、28、55週齢において、それぞれ腎細胞老化と炎症を評価した。腎細胞老化の評価は、老化関連ガラクトシダーゼ(SA-βGal)染色の増強ならびにp53およびp21の腎内mRNA発現の増強により行った。炎症の評価は、CD68+(マクロファージ)の免疫染色ならびにICAM-1, TNF-α, IFN-γ, IL-4, IL-6, IL-10, IL-17および TGF-βなどのmRNA発現測定を行った。細胞老化と炎症の評価は連続切片上で行い、同一ネフロンにおいて検討できるようにした。1型2型の糖尿病ではともに腎内マクロファージの浸潤が進んでおり、これは老化細胞の出現とほぼ同期するものであった。老化細胞および炎症の出現直前にIL-10の増大が見られ、出現時にTNF-αの上昇が確認できた。これらの変化はp21-KOマウスでは確認できなかった。また、腎細胞老化の原因探索を目的として、糖尿病p21-KOおよびwild-typeマウスに対してインスリンを処置し、高血糖の関与について調べた。糖尿病マウスにおいてインスリンは血糖値是正の度合いに応じて、腎老化を軽減させることができた。続いて、炎症を生じたネフロンを可視化する目的で、GFP transgenicマウスより単球を分離し、recipientマウスに養子細胞移植を行ったが、γ線照射を行っていないマウスでは、移植細胞のほとんどが肺で捕捉されてしまい、顕微鏡下にて接着浸潤を確認するまでには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の目的は大きく分けて3つあった。すなわち、(1)糖尿病性腎症(1型2型)におけるp21活性化、細胞老化および炎症進行の時系列的変化を正常マウスおよびp21-遺伝子欠失(KO)マウスを用いて明らかにする。また、老化細胞を切り出し、自己抗原や抗原提示分子の発現、p21核内移行度を観察することにより、その相互関係を明らかにする、(2)p21の薬物的阻害により、すでに進行している炎症および糖尿病性腎症治療が可能であるかを追求する、そして、(3)糖尿病腎において、p21活性化や炎症の生じたネフロンを、p21依存性発光技術やGFP導入単球の養子移植により選択的に抽出し、それらのネフロンの機能異常を評価する、である。これらの目的のうち、若干の研究計画の修正は加えたものの、以下の部分まで達成されている。すなわち、(1)1型2型糖尿病の両方において、腎臓内p21発現が細胞老化および炎症の発生に先んじて生じていること、1型糖尿病における細胞老化、炎症は高血糖/p21(局在は核内)に依存していること、1型2型ともにp21増大により誘導される感受性の高い炎症惹起因子としてTNF-αが候補としてあがることがわかった。TNF-αは炎症惹起因子としてよく知られており、TNF-αが老化細胞により炎症が誘導される因子となりうるかが、次の課題となる。(2)に関しては、p21阻害薬が未だ供給されておらず、開始できていない。(3)に関しては、炎症ネフロンのin vivoイメージングに課題が残っており、標的を老化ネフロン可視化に変更して、観察しているものが真に老化ネフロンであるかについて詳細な検討を開始したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
ここの計画に関する今後の方策としては、(1)は当初の目的であった自己抗原や抗原提示分子の発現変化は確認できていない。我々が解析してないものがターゲットである可能性も考慮し、マイクロアレイも視野に入れて検討していく。また我々が当初計画していた老化細胞を選択的に取り出す方法は実験に十分な量のRNAを回収することに難があったため、現在、より遺伝子を保持したまま、老化細胞を回収する方法を開発しているところである。(2)は動物実験使用に十分なp21阻害薬を精製するのに時間を要しており、まずはin vitroの培養細胞を用いた実験から開始する方向へ計画を練り直している。具体的には、マクロファージ/近位尿細管細胞の共培養系にて高血糖により近位尿細管細胞の老化を引き起こすかを確認する。さらに、それによりTNF-αなどが分泌され、マクロファージが活性化されるかを確認し、これがp21阻害薬の培地中処置により予防できるかを検討する。(3)の実験は平成24年度実施の予定であったが、すでに開始しており、老化ネフロンin vivoイメージングに向けて取り組み、一部は可能性が見えてきている。今後はイメージングしているものが真に老化ネフロンであるか、老化することによる機能変化(あるいは、老化しても変化のない機能は何か)の解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究結果および推進状況によって若干の研究計画の変更を行うことになるが、変更した実験計画はすべて既存の研究機材により実施可能なものであり、平成23年に引き続き、研究計画を進めるにあたって、最も多くの研究費と使用するものは、消耗品費であると思われる。研究計画(1)においては、動物購入費(OLETFおよびKKAyマウス)、老化細胞回収用のセルソーター用試薬およびPCR用試薬費が主なものになると思われる。研究計画(2)においては、共培養用培地、TNF-α検出キットおよびマクロファージ分化確認用試薬が主なものになると思われる。研究計画(3)においては、動物購入費、蛍光色素、たんぱく質ラベル化キット、多光子顕微鏡用消耗品(カバーガラス等)および老化細胞確認用PCRキットが主なものになると思われる。当初は研究経費として実験補佐員への謝金を予定していたが、消耗品費が予定以上に必要であったこと、申請者がこの研究計画により多くのエフォートを割り当てることが研究機関より認められたことから、実験補佐員の雇用は見送っている。
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