2011 Fiscal Year Research-status Report
Hippoシグナル伝達系の活性を制御する化合物の探索とその応用
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23790325
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中川 健太郎 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70451929)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 薬剤探索 / ハイコンテントスクリーニング / 腫瘍抑制因子 / Hippo pathway / リン酸化 |
Research Abstract |
Hippo pathwayは細胞密度、細胞接着状態に応じて活性化し細胞増殖を制御する細胞内シグナル伝達機構である。ヒト癌症例で高頻度に機能不全が認められ、悪性度と相関するので、腫瘍抑制機構として重視されている一方、その機能亢進が過剰な細胞死を招き臓器障害を起こす可能性が明らかになりつつある。しかし、現時点ではHippo pathwayを特異的に刺激、阻害する試薬がないため、腫瘍抑制以外のHippo pathwayの生理的、病理的役割は解明が進んでいない。本研究ではHippo pathwayの抑制剤探索を行うと同時に、刺激剤の探索を行う。得られた候補分子を解析し、それらを用いてHippo pathwayの生理的、病理的役割を細胞レベル、個体レベルで解析する。本年度は1. Hippo pathwayによって機能が制御されている転写コアクチベーター、TAZを発現させたMCF10A細胞が、Hippo pathwayの抑制によりsphereとよばれる浮遊細胞塊を形成することを指標に、Hippo pathwayの機能を抑制する化合物の探索を行った。得られた化合物の中に、TAZの結合パートナーであるTEADによる転写を活性化するものが複数含まれていることを見出した。2. また、TAZと同様にHippo pathwayによって機能が抑制される転写コアクチベーターであるYAPにGFPを付加したGFP-YAPを恒常的に発現するU2OS細胞を樹立し、YAPの核外移行を利用したHippo pathwayを活性化する化合物の探索系を確立した。この細胞系を用い、ベータ1アドレナリン受容体のアゴニストであるドブタミンによってHippo pathwayが活性化することを報告した。化合物ライブラリーからYAPの細胞質への移行を促進する化合物のスクリーニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、初年度はHippoシグナルを制御する化合物の探索系の確立とスクリーニングの遂行を計画していた。このうち、探索系に関してはHippoシグナルのいわば出口であるYAP, TAZに関して、前者については局在の変化、後者についてはsphere形成能の獲得という細胞応答を指標とした評価系を確立した。またその評価系を用いたスクリーニング系で、複数のヒット化合物を得ることができ、本研究は順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(I) スクリーニングで得られた化合物の作用点の解明GFP-YAPの核外移行を促進する化合物、野生型TAZ発現細胞のsphere形成を促進する化合物、に関してそれぞれ分子標的の探索を行う。YAPとTAZさらにHippo pathwayの中核をなすキナーゼであるMST1/2およびLATS1/2のリン酸化体特異的抗体を用いて、化合物添加時の細胞内のHippo pathwayの活性化状態に関して検討を行う。同時にMAPKやPKA, PKCなどの他のキナーゼに対する作用を測定し、得られている化合物のHippoシグナルに対する特異性に関して検討する。またHippoシグナル伝達系の阻害剤候補に関しては、高密度培養条件下のU2OS細胞でみられるGFP-YAPの細胞質局在を核内へと誘導する化合物を絞り込む。(II)Hippo pathwayの活性変動が持つ生理的、病態的意味の解明1. Hippo pathwayが作用する化合物の細胞分化に対する影響の検討 これまでのスクリーニングで得られているsphere形成を誘導する化合物が間葉系細胞の分化に与える影響を検討する。TAZは間葉系幹細胞の脂肪細胞分化を抑制し、骨芽細胞分化を促進することが知られている。この間葉系幹細胞の分化系において、TAZに作用する化合物の機能解析を行う。2. Hippoシグナルの活性化が腫瘍抑制の新たな標的となる可能性の検証 Hippoシグナルを活性化する化合物の腫瘍抑制効果を、ヒトの腫瘍由来細胞株に対する増殖抑制、細胞死誘導、運動能などの癌細胞生物学的手法を用いて検討する。またTAZが幹細胞性を反映するとされるsphere形成を支持することから、Hippoの抑制が癌幹細胞の維持に機能する可能性が考えられる。Hippoの活性化剤が癌幹細胞の比率を減少させる可能性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は実験を遂行するにあたり必要となる細胞培養用試薬や、遺伝子導入試薬、抗体などの消耗品や、動物実験を行うに必要な実験動物の購入に用いる予定である。
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Research Products
(2 results)