2011 Fiscal Year Research-status Report
α6β4インテグリンによる癌の悪性形質発現機序の解明
Project/Area Number |
23790373
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00458217)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 癌 / インテグリン / 糖鎖 |
Research Abstract |
平成23年度に実施した研究の主な成果としては、下記の二つが挙げられる。1、N型糖鎖のβ4インテグリン機能への影響:細胞運動や接着などβ4インテグリンの機能におけるN型糖鎖の寄与を調べるために、N型糖鎖欠損および野生型β4インテグリン発現ケラチノサイトを樹立した。N型糖鎖欠損β4インテグリン発現ケラチノサイトは野生型発現ケラチノサイトに比べ、細胞運動や接着促進活性がいずれも低下していた。これらの活性の低下はN型糖鎖を介したβ4インテグリンとEGFR、ガレクチン3との超分子複合体形成の減少によるものであった。これらの結果は、N型糖鎖を介した超分子複合体がβ4インテグリン分子の機能に影響を与えるという全く新しい概念を提示するものである。2、癌におけるβ4インテグリン上N 型糖鎖の同定:癌細胞と正常細胞とでβ4インテグリンの糖鎖構造に違いがあるかどうかについて検討をおこなった。ヒト皮膚癌の組織切片に対して、特異的なN型糖鎖構造を認識するいくつかのレクチンおよび抗β4インテグリン抗体で二重染色をおこなったところ、特定のレクチンにおいてβ4インテグリンとの共局在が観察された。また、レクチンブロットをおこなったところ、Rasにより癌化させたケラチノサイトのβ4インテグリンは正常ケラチノサイト由来のものに比べ、上記で同定したレクチンでのシグナルの増加が認められた。これらの結果から、癌組織においてβ4インテグリン上には特異的な糖鎖構造の増加がみられると考えられた。1における結果と合わせると、癌化に伴い増加するタンパク質上の癌特異的糖鎖が超分子複合体形成を促すことで癌の浸潤・転移を促進している可能性が考えられる。この仮説の証明は癌治療薬開発においてタンパク質だけではなく糖鎖もターゲットになりうることを示すことになり、これまでにないタイプの薬剤を生み出す足がかりとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において本研究の根本的な疑問である"β4インテグリン上N型糖鎖は細胞運動や増殖シグナルへ影響を及ぼすのか"についてN型糖鎖欠損β4インテグリン発現細胞を用いて明らかにすることができた。また、癌におけるβ4インテグリン糖鎖についても同定できた。これらは申請書の研究計画どおりの進展である。したがって、予定どおりかつ研究の大枠をとらえることができたという点から研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
β4インテグリン糖鎖の 1、相互作用分子への影響, 2、浸潤・転移への影響, 3、癌の増殖やアポトーシス耐性への影響について解析をおこなっていく。1についてはN型糖鎖の有無によるβ4インテグリン細胞内および細胞外における相互作用分子の変化とそれに伴うシグナルの変化について調べていく。2についてはN型糖鎖欠損あるいは野生型β4インテグリン発現ケラチノサイトを用いてin vitroではマトリゲルを用いた細胞浸潤アッセイを、in vivoでは免疫不全マウスの皮下に移植あるいは尾静脈注射後、その腫瘍形成能および浸潤・転移能を調べる。更に、形成された腫瘍の切片を細胞運動や細胞死、細胞増殖などに関連する分子(ラミニン332, PI3K, Akt, Src, caspase, Ki67など)やそのリン酸化特異的抗体を用いることで、糖鎖の変化によりどのような機能低下が起きたのかを判断する。3についてはN型糖鎖欠損あるいは野生型β4インテグリン発現ケラチノサイトの細胞増殖能や薬剤によるアポトーシス耐性への影響やそのメカニズムについて調べていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用研究費は研究が順調に進んだため生じた。これは翌年度に請求する研究費とあわせて使用する。それらは細胞培養試薬や器材などの消耗品、抗体、実験用動物、書籍、学会発表における旅費および論文投稿費用として使用する計画である。
|
Research Products
(4 results)