2012 Fiscal Year Annual Research Report
α6β4インテグリンによる癌の悪性形質発現機序の解明
Project/Area Number |
23790373
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00458217)
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Keywords | β4インテグリン / 癌 / 糖鎖 |
Research Abstract |
当該研究の主な成果としては、主に下記の二つが挙げられる。 1、 β4インテグリン機能へのN型糖鎖の影響:細胞運動や接着などβ4インテグリンの機能におけるN型糖鎖の寄与を調べるために、N型糖鎖欠損および野生型β4インテグリン発現ケラチノサイトを樹立した。N型糖鎖欠損β4インテグリン発現ケラチノサイトは野生型発現のものに比べ、細胞運動や接着促進活性がいずれも低下した。これらの活性低下はN型糖鎖を介したβ4とEGFR、ガレクチン3との超分子複合体形成の減少によるものであった。本結果は、N型糖鎖を介した超分子複合体がβ4インテグリン分子の機能に影響を与えるという全く新しい概念を提示するものである。また、予備実験において、β4インテグリンN型糖鎖欠損によりβ4インテグリン依存的細胞増殖および細胞増殖シグナルの低下が認められた。 2、癌におけるβ4インテグリン上N 型糖鎖:ヒト皮膚癌の組織切片に対し、特異的なN型糖鎖構造を認識するいくつかのレクチンおよび抗β4インテグリン抗体で免疫染色をおこなった。その結果、特定の糖鎖構造が癌組織において高発現しており、そのシグナルはβ4インテグリンと共局在していた。また、レクチンブロット解析において、Rasにより癌化させたケラチノサイトのβ4インテグリンは正常ケラチノサイト由来のものに比べ、上記で同定した糖鎖構造の増加が認められた。これらの結果から、癌組織においてβ4インテグリン上には特定の糖鎖構造の増加がみられると考えられた。 上記1,2を総合的に考えると、癌化に伴い増加するβ4インテグリン上の癌特異的糖鎖が超分子複合体形成を促すことで癌の浸潤・転移や増殖を促進している可能性が考えられる。このことはタンパク質だけではなく糖鎖をターゲットにした、これまでにないタイプの薬剤が癌治療薬として有効である可能性を示唆している。
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Research Products
(2 results)