ＫＲＡＳ変異・高増殖活性型肺腺癌の分子病理学的特性の追求

2011 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 23790411
• Research Institution: Yokohama City University
• Principal Investigator: 禹 哲漢 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (90537177)
• Project Period (FY): 2011-04-28 – 2013-03-31
• Keywords: 肺癌 / KRAS / 増殖活性

Research Abstract

がんの悪性度を規定する分子基盤を明らかにすることは、がんの進展機構を解明する上で、また新規の分子標的療法の開発につながる重要な研究案件である。本研究の目的は、その分子基盤の一端を明らかにすることである。申請者はこれまでにKRAS変異肺腺がんの予後が他の肺腺がんと比べて不良であることを示してきた。さらにKRAS変異肺腺がんの中でも細胞増殖活性が高い群と低い群があり、KRAS変異/高増殖活性を示す群が、最も予後不良であることを示してきた。従って、KRAS変異/高増殖活性を示す肺腺がんの悪性度を規定する因子を同定することは、がんの悪性度を規定する分子基盤を解明する上で有用な事であると考えられる。申請者らは既に、遺伝子発現マイクロアレイを用いたKRAS下流分子の網羅的解析から、肺がんの進展に関わる候補癌抑制遺伝子を複数同定してきた。申請課題では、複数のKRAS下流分子の発現プロファイルをみることで、肺腺がんの悪性度を規定する分子基盤を明らかにすることを目標としている。　当該年度では、マイクロアレイ解析によって抽出された分子群の発現レベルを、先ずはKRAS導入細胞で検証し、マイクロアレイ解析の結果との整合性を求めた。申請の表に記した分子群の殆どすべての発現変動が確認され、マイクロアレイの結果の正当性が支持された。２３年度は特に、ケモカイン系３分子（CXCL7 (PPBP), CCL3, CXCL2）の発現解析を原発性肺癌病変で行い、これらの発現レベルが高度に上昇している病変があることを確認している。ほぼ計画通りの進行状況である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

前述の如く、当該年度では、マイクロアレイ解析によって抽出された分子群の発現レベルを、先ずはKRAS導入細胞で検証し、マイクロアレイ解析の結果との整合性を求めた。申請の表に記した分子群の殆どすべての発現変動が確認され、マイクロアレイの結果の正当性が支持された。２３年度は特に、ケモカイン系３分子（CXCL7 (PPBP), CCL3, CXCL2）の発現解析を原発性肺癌病変で行い、これらの発現レベルが高度に上昇している病変があることを確認している。ほぼ計画通りの進行状況である。

Strategy for Future Research Activity

申請書の計画とおりに、以下の如くに進める。(1)mRNA発現解析　肺腺がん190例の手術材料から抽出された高悪性度群(再発例)20例、低悪性度群(無再発例)40例(新鮮凍結材料に限定する)のうち、まず半数にあたる30例を対象として定量的RT-PCR法によるmRNAの発現解析を行う。解析に当たっては、マイクロダイセクション法によって腫瘍細胞と非腫瘍部気道上皮細胞をとりわけた後に定量的RT-PCR法を行うこととする。採取、保存されている新鮮凍結検体の質に関しては、前述のこれまでの研究成果に示す如く、本課題の研究項目の完遂に十分な質のものである。(2)蛋白質発現解析　市販の特異抗体を用いてウェスタンブロット法、およびパラフィン切片上で免疫染色法を行い、蛋白質の発現レベルを半定量的に解析する。特に、免疫染色法の結果から得られた染色様式を解析し、発現レベル半定量化のための閾値設定の検討を行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

申請書の購入計画とおりに消費する。　ほとんどが実験試薬類の消耗品である。高額機器、打ち合わせのため出張費には使用しない。

Research Products

• [Journal Article] Severe obliterative bronchitis associated with Stevens-Johnson syndrome (2011)
  • Author(s): Woo T, Saito H, Yamakawa Y, Komatsu S, Onuma S, Okudela K, Nozawa A, Aihara M, Ikezawa Z, Ishigatsubo Y
  • Journal Title: Intern Med Volume: 50(22) Pages: 2823-7
  • DOI: DOI:10.2169/internalmedicine.50.5582
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] Prognostic value of CD133 expression in stage I lung adenocarcinomas (2011)
  • Author(s): Woo T, Okudela K, Mitsui H, Yazawa T, Ogawa N, Tajiri M, Yamamoto T, Rino Y, Kitamura H, Masuda M
  • Journal Title: International Journal of Clinical and Experimental Pathology Volume: 4(1) Pages: 32-42
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] Insulin-like growth factor binding protein-4 gene silencing in lung adenocarcinomas (2011)
  • Author(s): Sato H, Sakaeda M, Ishii J, Kashiwagi K, Shimoyamada H, Okudela K, Tajiri M, Ohmori T, Ogura T, Woo T, Masuda M, Hirata K, Kitamura H, Yazawa T
  • Journal Title: Pathology International Volume: 61(1) Pages: 19-27
  • DOI: 10.1111/j.1440-1827.2010.02612.x.
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] Stromal micropapillary pattern predominant lung adenocarcinoma--a report of two cases (2011)
  • Author(s): Ohe M, Yokose T, Sakuma Y, Osanai S, Hasegawa C, Washimi K, Nawa K, Woo T, Hamanaka R, Nakayama H, Kameda Y, Yamada K, Isobe T
  • Journal Title: Diagnostic Pathology Volume: 6 Pages: 92
  • DOI: 10.1186/1746-1596-6-92
  • Peer Reviewed
• [Presentation] 原発性肺癌との鑑別を要した、尾骨Adamantinoma術後17年目に肺転移した1例 (2011)
  • Author(s): 禹哲漢, 中山治彦, 坪井正博, 伊藤宏之, 名和公敏, 濱中瑠利香, 山田耕三, 長谷川千花子, 横瀬智之, 亀田陽一, 益田宗孝
  • Organizer: 第169回 日本肺癌学会 関東支部会
  • Place of Presentation: 京王プラザ（東京都）
  • Year and Date: 2011年6月18日
• [Presentation] 肺門部リンパ節に対するEBUS-TBNAの診断的有用性 (2011)
  • Author(s): 禹哲漢, 齋藤春洋, 村上修司, 本田健, 大江美紀, 近藤哲郎, 尾下文浩, 中山治彦, 山田耕三
  • Organizer: 第34回 日本呼吸器内視鏡学会総会
  • Place of Presentation: アクトシティー浜松（静岡県）
  • Year and Date: 2011年6月16日
• [Presentation] Prognostic value of CD133 expression in stage I lung adenocarcinomas (2011)
  • Author(s): 禹哲漢, 奥寺康司, 田尻道彦, 山本健嗣, 荒井宏雅, 湯川寛夫, 和田修幸, 利野靖, 益田宗孝
  • Organizer: 第111回 日本外科学会 定期学術集会
  • Place of Presentation: 震災後のため紙上発表
  • Year and Date: 2011年5月26日
• [Presentation] ステージI非小細胞肺癌に対する縮小手術の長期予後 (2011)
  • Author(s): 禹 哲漢, 中山治彦, 坪井正博, 伊藤宏之, 濱中瑠利香, 生駒陽一郎, 名和公敏, 石川義啓, 益田宗孝
  • Organizer: 第28回日本呼吸器外科学会総会
  • Place of Presentation: 別府ビーコンプラザ（大分県）
  • Year and Date: 2011年5月12日
• [Presentation] 肺腺癌の腫瘍増大速度とEGFR/KRAS遺伝子変異の検討 (2011)
  • Author(s): 禹哲漢, 斉藤春洋, 佐久間裕司, 剱持喜之, 杉浦真貴子, 大江美紀, 村上修司, 近藤哲郎, 尾下文浩, 有賀直広, 濱中瑠利香, 名和公敏, 伊藤宏之, 中山治彦, 山田耕三
  • Organizer: 第52会日本肺癌学会総会
  • Place of Presentation: 大阪国際会議場（大阪府）
  • Year and Date: 2011年11月3日
• [Presentation] ステージＩ非小細胞肺癌縮小手術時におけるSafety marginの解析 (2011)
  • Author(s): 禹 哲漢, 中山治彦, 坪井正博, 伊藤宏之, 名和公敏, 濱中瑠利香, 益田宗孝
  • Organizer: 第64回日本胸部外科学会総会
  • Place of Presentation: 名古屋国際会議場（愛知県）
  • Year and Date: 2011年10月10日