2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリオーマウイルスの新たな遺伝子発現制御機構の解明
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23790429
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 靖子 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (60507169)
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Keywords | ウイルス / 脳神経疾患 |
Research Abstract |
本研究は、ヒトポリオーマウイルスであるJCウイルス(JCV)が発現する長鎖RNAの機能を明らかにし、それらが宿主細胞内にてウイルス増殖を制御するメカニズムを解明することを目的としている。 JCVゲノムから転写されていることが判明した10kb前後の後期遺伝子方向の長鎖RNAの機能を解析するため、長鎖RNAをin vitroで合成しウイルスゲノムと共に細胞内に導入した結果、ウイルスmRNAの発現に顕著な変化は認められなかった。また、長鎖RNAのノンコーディング領域に対するsiRNAを作成し発現抑制を試みたが、十分な抑制効果が確認できなかった。 後期遺伝子方向のRNAを詳細に解析した結果、Agnoproteinのコーディング領域内約120bpの繰り返し配列が様々な数で生じていることが判明した。このことから約5kbのRNAスプライシングが数回にわたり起こっていると考えられた。このスプライシングがウイルス遺伝子発現に与える影響について今後検討を行う。 こうしたウイルス遺伝子の転写、翻訳に関わる細胞内因子を探索するため、siRNAライブラリーを用いた網羅的解析を行う予定である。この解析に用いるレポーターウイルスを作製するため、後期遺伝子のVP2、VP3、VP1領域をそれぞれGFPに置換したウイルスゲノムを作成し、蛍光タンパク質発現、ゲノム複製、他のウイルスタンパク質発現の効率を比較検討した。IMR-32細胞では3種類のレポーターウイルスはGFPを発現し、ゲノム複製も確認できた。これらのレポーターゲノムの早期タンパク質TAgの開始コドンを停止コドンに置換したものでは、GFP発現が顕著に低下したことから、これらのレポーターウイルスはゲノム複製および早期、後期タンパク質発現を反映するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究推進方策に沿った研究を計画通り実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究結果より、後期遺伝子のmRNAにおいてAgnoproteinのORF内にタンデムリピートが生じるRNAが存在することが判明した。このRNAがウイルス遺伝子発現に与える影響を解析するため、スプライシングサイトの変異ウイルスゲノムを作成し解析を行う。この後期遺伝子スプライシングのパターンが、感染許容細胞に特異的なものであるかについても検討を行う。 平成24年度に作製したレポーターウイルスゲノムをIMR-32細胞に導入し、siRNAライブラリーによるスクリーニングを行う。ウイルス増殖に関与する細胞内遺伝子が判明した場合、特に転写、翻訳に関わる因子を中心にそのメカニズムについて詳細な検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の経費の節減の結果生じた使用残については、次年度研究費と合わせ、上記研究遂行に必要な試薬、消耗品費として使用する。また、上記研究の結果、研究成果を報告できる場合、国内学会参加の旅費として使用する。
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