2011 Fiscal Year Research-status Report
エンドトキシン肝障害におけるATPの好中球誘導による炎症悪化の機序
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23790436
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川村 宏樹 新潟大学, 医歯学系, 講師 (20333495)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マクロファージ / 好中球 / ATP / MIP-2 / P2受容体 |
Research Abstract |
感染症の中で、敗血症によるエンドトキシンショックはMφからの過剰な炎症性因子産生が深刻な要因であり、さらに、高頻度に合併して好中球が引き起こす多臓器不全が認められる。現在でも治療が困難なのは、Mφの活性経路が複雑で不明な点もあることが一因とされている。また、申請者はこれまでの研究成果から、「実際の感染症等による炎症性疾患で、細胞外に放出されたATPが活性化Mφの好中球誘導を亢進することにより、更なる炎症悪化を誘発する経路」を示唆している。そこで本研究は、エンドトキシンと細胞外ATPによるMφの活性化経路と好中球誘導に焦点を当て、エンドトキシン肝障害の好中球による肝炎悪化の機序と抑制検討の基盤研究を目的とする。平成23年度の研究実績として、以下のことを明らかにした。1. ATPをマウスの腹腔内に投与すると好中球が増加した。2. 1の腹腔内洗浄液中には好中球走行因子のMIP-2、KCが増加した。3. In vitroでMφをATPで刺激すると培養液中にMIP-2のみ増加した。4. 3はATPの受容体欠損マウス(P2X7R欠損)や受容体のアゴニストを用いた研究により、MφのP2X7RとP2Y2Rの関与が明らかになった。5. ATP刺激によるMφのMIP-2産生は、細胞内でROSからERK 1/2やp38 MAPKのシグナル経路が重要であった。6. ATP腹腔内投与の好中球増加は、抗MIP-2抗体を予め投与しておくと好中球の増加は抑制された。これらの結果は、英論文として報告する(Immunology, 2012, In press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究目的である「細胞外ATPによるエンドトキシン肝障害の好中球による肝炎悪化の機序と抑制」の根本である、細胞外ATPのMφを介した好中球遊走の経路を明らかにした。この成果は英論文として報告する(Immunology, 2012, accepted)ので、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ATP刺激によるMφからのMIP-2産生経路とMIP-2による好中球誘導を明らかにし、英論文として報告する。そのため、当初予定していたLPSとATP刺激によるMφ活性の研究予定が変更になった。次年度は発表する論文結果を踏まえて、以下のように研究を行っていく。1. 活性化MφのATP刺激により産制が亢進される好中球遊走因子と炎症性因子の同定 (1) LPS活性化MφのATP刺激による好中球遊走因子の産生解析:好中球遊走因子の中で、MIP-2とKCの測定をおこなう。正常マウス肝臓よりKupffer細胞を単離して、LPSまたはLPS/ATP共刺激培養をおこない、上清中のMIP-2とKCを測定して産生亢進を検討する。また、p38MAPKとERK1/2シグナルの発現量変化とシグナル阻害剤を加えて炎症性因子の亢進にどう関わっているか検討する。(2)LPS活性化MφのATP刺激による炎症性因子の産生解析:炎症性因子の中で、TNF, IL-1b, NOおよび活性酸素の測定をおこなう。(3)トロンビン受容体PAR1を介したMφ刺激とATP刺激による好中球遊走因子の産生解析: トロンビンでMφを刺激するとPAR1からp38MAPKやERK1/2のシグナル経路を介して活性化され、好中球遊走因子を産生することが報告された。ATPも同シグナル経路を介すことから、Kupffer細胞をトロンビンやPAR1の活性化ペプチドとATPと共刺激培養をおこない、上清中のMIP-2とKCを測定して産生亢進とシグナル経路を検討する。2. 活性化好中球のATP刺激によるエラスターゼ産生の亢進の解析: モデルマウスから好中球を単離してATPと培養をおこない、上清中のエラスターゼを測定して産生亢進を検討する。これにより、細胞外ATP刺激の好中球エラスターゼ増加による炎症悪化の機序を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、当初予定していた研究計画が新たな発見により変更になった。そのため次年度では、更なる研究を遂行する為に、本年度の研究変更に伴う未使用金も合わせて使用する。使用計画としては、マウスや試薬などの消耗品が6割、マウス飼育費が2割、学会での研究成果発表等の旅費を1割、と予定している。備品、人件費・謝礼金の使用予定はない。
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Research Products
(2 results)