2012 Fiscal Year Research-status Report
エンドトキシン肝障害におけるATPの好中球誘導による炎症悪化の機序
Project/Area Number |
23790436
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川村 宏樹 新潟大学, 医歯学系, 講師 (20333495)
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Keywords | マクロファージ / 好中球 / LPS / ATP / MIP-2 / KC / P2受容体 |
Research Abstract |
感染症の中で、敗血症によるエンドトキシンショックはMφからの過剰な炎症性因子産生が深刻な要因であり、さらに、高頻度に合併して好中球が引き起こす多臓器不全が認められる。現在でも治療が困難なのは、Mφの活性経路が複雑で不明な点もあることが一因とされている。そこで本研究は、エンドトキシンと細胞外ATPによるMφの活性化経路と好中球誘導に焦点を当て、エンドトキシン肝障害の好中球による肝炎悪化の機序と抑制検討の基盤研究を目的とする。 平成24年度の研究実績として、以下のことを明らかにした。1. ATPの受容体欠損マウス(P2X7R欠損)にLPS誘導性エンドトキシン肝障害を作成した結果、LPSの濃度変動をおこなってもコントロールマウスとP2X7RKOマウスには24時間生存率に大きな違いは認められなかった。2. 1で死亡するまでの時間ではP2X7RKOマウスに生存率が高い傾向が認められた。3.エンドトキシン肝障害を誘導する前に好中球除去をおこなったが、非除去群と24時間生存率に大きな違いは認められなかった。4.In vitroでTGC誘導性Mφを用いてLPS/ATP刺激の培養をおこないケモカイン産生量を検討したが、Mφの採取方法のためか同じ傾向を示す結果は得られなかった。5.LPS/ATP刺激によるチオグリコレート誘導性Mφの活性化経路の検討でも、すでに活性化しているためかLPS単独群、ATP単独群、LPS/ATP併用群で同じ傾向を示す結果は得られなかった。 以上の結果から、TGC誘導性Mφの使用した実験計画変更の必要性が認められた。また、LPS誘導性エンドトキシン肝障害は血液中や末梢組織から好中球を除外しても、骨髄から迅速な供給が起こり肝障害が発症すると推測された。このことから、LPS誘導性エンドトキシン肝障害における好中球走行因子の重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は平成23年度明らかにした「細胞外ATPのMφを介した好中球遊走の経路」を、LPS誘導性エンドトキシン肝障害モデルマウスに応用するために実験を計画した。しかしながら、ATP単独刺激では問題なかったMφの採取方法が実験進行上で問題となった。そのため本年度は当初予定していた研究計画を十分に進めることはできなかった。そのために、達成度はやや低い。しかしながら前年度と合わせれば、ほぼ予定通りに進展していると考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は実験手技や解析方法に問題点が浮上し、計画していたように研究が予定どおり進まなかった。平成25年度は申請時に記載しているように、In vitroの実験系をMφセルラインのRAW264.7細胞を使用に切り替える。また、平成25年度は最終年度になるため結果をまとめることを念頭に置き、これまで得られた結果と前年度実施できなかった計画を基本に以下のように研究をおこなっていく。 1. 活性化MφのATP刺激により産制が亢進される好中球遊走因子と炎症性因子の同定 (1) LPS活性化RAW264.7細胞のATP刺激による好中球遊走因子の産生解析:好中球遊走因子の中で、MIP-2とKCの測定をおこなう。RAW264.7細胞を、LPSまたはLPS/ATP共刺激培養をおこない、上清中のMIP-2とKCを測定して産生亢進を検討する。また、p38MAPKとERK1/2シグナルの発現量変化が炎症性因子の亢進にどう関わっているか検討する。。(2)LPS活性化RAW264.7細胞のATP刺激による炎症性因子の産生解析:炎症性因子の中で、TNF, IL-1, NOおよび活性酸素の測定をおこなう。(3)トロンビン受容体PAR1を介した刺激されたRAW264.7細胞とATP刺激による好中球遊走因子の産生解析:RAW264.7細胞をトロンビンやPAR1の活性化ペプチド(TFLLR-NH2)とATPと共刺激培養をおこない、(1)と同じく上清中のMIP-2とKCを測定して産生亢進とシグナル経路を検討する。 2. 活性化好中球のATP刺激によるエラスターゼ産生の亢進の解析: モデルマウスから好中球を単離してATPと培養をおこない、上清中のエラスターゼを測定して産生亢進を検討する。これにより、細胞外ATP刺激の好中球エラスターゼ増加による炎症悪化の機序を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究実績の概要で述べたように、当初予定していた研究計画が予定通り進まなかった。そのため平成25年度では、更なる研究を遂行する為に、本年度の研究変更に伴う未使用金も合わせて使用する。 使用計画としては、マウスや試薬などの消耗品が7割、マウス飼育費が2割、学会での研究成果発表等の旅費を1割、と予定している。高額な備品、人件費・謝礼金の使用予定はない。
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Research Products
(3 results)