2012 Fiscal Year Annual Research Report
上皮由来の線維芽細胞様細胞の癌間質における新規作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
23790455
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Research Institution | 独立行政法人国立がん研究センター |
Principal Investigator |
白木原 琢哉 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30548756)
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Keywords | EMT / 癌微小環境 / TGF-β / FGF-2 |
Research Abstract |
過去の研究結果から癌微小環境において癌細胞の浸潤・転移を促進することが推測される正常上皮細胞に由来するEMT獲得活性型線維芽細胞様細胞の存在を示すことを目的とした実験を行った。正常乳腺上皮細胞株にTGF-βとFGF-2の共刺激を行って活性型線維芽細胞様細胞を誘導し、その細胞にて特異的な発現変動が認められる分子をマイクロアレイにより統合的に解析した。その中から細胞骨格、運動、分化への関与が報告されていて特に重要と推測される約10種類の遺伝子を同定した。さらにEMT誘導に伴う遺伝子発現の経時変化や、ウェスタンブロットと細胞免疫染色によるタンパク質発現を確認して絞り込みを行い、最終的にITGA3、RET、SERPINB2の3遺伝子に着目した。ところが、乳がんの組織染色を行うとITGA3はがん細胞で強い発現が認められ、期待していた正常上皮由来のEMT獲得細胞を観察することができなかった。またRETとSERPINB2は抗体の品質により組織染色を行うことができなかった。しかし、これらの遺伝子についてTGF-βとFGF-2の共刺激によるEMT誘導時での機能解析を行ったところ、siRNAや阻害剤では強い線維芽細胞様の形態変化が阻害されることはなかったが、ITGA3の中和抗体によって浸潤能が約4割程度抑制された。そこで当初の目標とは異なるが、乳がんにおけるITGA3の発現を20種類の細胞株で比較したところ、分化度が低く悪性度が高いとされるbasal型の乳がんにおいてITGA3の高発現が見られ、さらにErkのリン酸化の強さとの相関も認められた。ITGA3の高い細胞株にMEK阻害剤を用いるとITGA3の発現は抑制され、ITGA3中和抗体と同様に浸潤能が阻害された。本研究成果は現在論文に投稿中である。
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