2012 Fiscal Year Research-status Report
スポロゾイト特異的ロプトリー蛋白質欠損原虫作出によるマラリアの宿主侵入機構の解析
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23790459
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
徳永 順士 愛媛大学, 総合科学研究支援センター, 技術員 (30596151)
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Keywords | マラリア原虫 / スポロゾイト / ロプトリー |
Research Abstract |
マラリア原虫の生活環において、スポロゾイトは肝細胞に、メロゾイトは赤血球にそれぞれ寄生胞を形成して侵入し寄生する。この2つの侵入ステージ原虫のみが先端部にロプトリーと呼ばれる先端部小器官を有する事から、その貯蔵分泌タンパク質の細胞寄生への 関与が推測される。実際、メロゾイトのロプトリー分子のいくつかは、赤血球侵入時に形成される足場(ムービングジャンクション)に局在する事から、侵入への関与が強く示唆されてきた。一方、スポロゾイトが標的細胞に侵入する分子機構、特にロプトリーに局在する分子の解析は全く進んでいない。 我々はスポロゾイトが標的細胞に侵入する際にもメロゾイトと同様にロプトリーが重要な役割を担っているのではないかと考え、昨年度はスポロゾイトのロプトリー分子の同定を試みた。その結果、スポロゾイトのロプトリーに局在する分子を8個見出した。 本年度は、我々のグループで開発したプロモーターを置換することによりスポロゾイト時期特異的に標的分子の発現を抑制する方法を用いて、スポロゾイトのロプトリーへの局在が確認された分子の性状・機能解析を試みた。作製した遺伝子改変原虫を蚊に感染させ、スポロゾイトの形成能・運動能・唾液腺への侵入効率、更にスポロゾイトをネズミに静脈投与して肝細胞への侵入効率を評価した。その結果、唾液腺の侵入に関与する分子、肝細胞感染に関与する分子群が見出された。これらの結果からロプトリータンパク質群が役割分担して細胞侵入メカニズムを担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はスポロゾイトのロプトリー分子を同定し、その機能を解析することを目的としている。当初の研究計画は二年間の予定であり、本年度で終了予定であったが、一年間延長することとした。 遅延の原因は研究当初に予定していた方法が、技術的な問題により実施不可能であることが判明した為である。本研究は対象とする分子が多い為、タンパク質の発現・局在解析をc-mycタグを付加した遺伝子組換えマラリア原虫を作製し、抗c-myc抗体を用いることにより効率的に行った。その結果、スポロゾイトのロプトリーに局在する分子8個の同定に成功した。 当初の計画ではこれらの分子の性状・機能解析を行う為に、c-mycタグを付加した改変原虫のプロモーター領域を更に置換することにより(2重変異体の作製)スポロゾイト時期特異的遺伝子発現抑制原虫を作製し、抗c-myc抗体を用いてその発現抑制効果を評価する予定であった。しかし、2重変異体の作製が技術的問題により困難であることが判明した。その為、当初の計画を変更し、野生型原虫のプロモーター領域を置換する事により標的分子の発現を抑制し、その効果を特異抗体を用いて評価する方法に変更した。当初の計画ではc-myc抗体を用いて効率的に研究を推進する予定であったが、各分子に対する特異抗体を作製し解析に用いる方法に変更した為、計画に遅延が生じた。遅延はあるものの、研究成果は順調にえられているので、継続して研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにスポロゾイトのロプトリーに局在する分子を8個同定することに成功した。現在は各分子の性状・機能解析をスポロゾイト時期特異的発現抑制組換え原虫を作製して行っているところである。その結果、蚊の唾液腺侵入に関わる分子、肝細胞への侵入に関わる分子群が分かってきた。これらはロプトリー分子が標的細胞への侵入に際し、異なった機能を持ち、役割分担をしている可能性を示唆している。今後はライブイメージングの手法などを駆使して、各分子がどのようにして唾液腺や肝細胞への侵入に関わっているのかを明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の予算のうち約100万円を次年度へ繰り越す。繰り越し金が発生した理由は、現在までの達成度の項目に記載したように、研究手法の変更により計画に遅れが生じた為である。 本年度の繰り越し金は、上記の研究推進方策を実施する為の研究費として使用する。研究を実施する為の試薬・消耗品に科研費の大部分を使用する。また研究成果を発表する為の学会参加旅費として残りの科研費を使用する。
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