2012 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌IpaHタンパクE3リガーゼ活性による宿主シグナル伝達阻害機構の解明
Project/Area Number |
23790472
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芦田 浩 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (10535115)
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Keywords | 赤痢菌 / エフェクター / シグナル伝達 |
Research Abstract |
赤痢菌のエフェクターであるIpaHファミリータンパクは炎症反応抑制に寄与し、さらにE3 ユビキチンリガーゼ活性を有している。これより、IpaHファミリータンパクは赤痢菌感染により活性化される様々なシグナル伝達経路の因子を標的とし、そのE3 リガーゼ活性により標的分子のユビキチン化、プロテアソーム分解促進を担うことで、感染に伴う宿主のシグナル伝達を阻害していると推測される。 赤痢菌感染時の転写因子活性測定により、各IpaHタンパクの作用するシグナル伝達経路の特定を試みた。この結果、IpaHファミリーのうち、IpaH07は自身のE3リガーゼ活性依存的にNF-κB活性化を抑制していることが明らかとなった。そこでIpaH07の赤痢菌感染時のNF-κB抑制機構の解明を行った。赤痢菌は宿主細胞内へと侵入後、ファゴソーム膜に包まれるが、菌はこれを速やかに破壊し、細胞質中へと離脱、分裂、増殖を繰り返し、隣接細胞へ感染を拡大していく。この際、破壊されたファゴソーム膜に含まれるジアシルグリセロール(DAG)が細胞内でDAMPsとして働き、DAG受容体であるプロテインキナーゼC(PKC)の活性化を介し、NF-κB活性化を誘導することを明らかにした。IpaH07はこの赤痢菌感染時のDAG-PKC依存的なNF-κB経路を特異的に抑制することから、DAG-PKC-NF-κB経路におけるIpaH07標的因子を探索したところ、下流のシグナル因子TRAF2との結合、ユビキチン化、プロテアソーム分解への誘導が確認された。以上より、IpaH07-TRAF2間の相互作用が赤痢菌感染時のファゴソーム破壊によるDAG-PKC-NF-κB活性化を阻害、炎症反応を抑制することが示された。
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