2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790489
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
宇田 晶彦 国立感染症研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (80392322)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 野兎病 / 野兎病菌 / Francisella / 病原性 / 病原因子 / 感染症 / 人獣共通感染症 / Pathogen |
Research Abstract |
研究目的 野兎病は野兎病菌(Francisella tularensis)に感染した野生動物などとの接触によって引き起こされる急性熱性疾患である。本菌は極めて強い感染性を有し、10-50個の菌数でマウスに致死性の感染をもたらすとの報告がある。これまでに、野兎病菌保有タンパク質PdpCは、巨大な強塩基性タンパク質であり、既知タンパク質とはホモロジーが無く、機能未知ではあるが、野兎病菌の病原性に不可欠である可能性を明らかにしてきた。本研究では、野兎病菌pdpC遺伝子欠損株を作出し、野兎病菌の極めて高い感染性や病原性と、pdpC遺伝子の関係について検討を行うことを目的とする。研究経過と成果(1)野兎病菌pdpC遺伝子欠損株の作出。野兎病菌pdpC遺伝子欠損株を作出する為に、pdpC遺伝子のORFをテトラサイクリン耐性遺伝子(tetR)で置換する相同組換えを試みた。pdpC遺伝子の近接領域を付加したtetR遺伝子のPCR産物や、クローニングしたプラスミドで形質転換を行ったが、pdpC欠損株は得られなかった。そこで、新規手法であるグループIIイントロン(LactococuslactisLtrBを使用)挿入によるpdpC遺伝子の破壊を試みている。(2)pdpC遺伝子発現プラスミドの作出。PdpC分子の機能部位を同定する為に、全または一部欠損したpdpC遺伝子を発現するプラスミドベクターの構築が必要とされた。野兎病菌・大腸菌シャトルベクターpOM5(8kbp)を用いて、pdpC遺伝子(4kbp)のクローニングを試みた。この結果、様々な大腸菌宿主および生育温度条件を試験したが、クローニングできなかった。ベクターの大きさに問題があると考え、野兎病菌および大腸菌における増殖に不必要な領域を削除したpNVU01ベクター(5kbp)を新たに作出し、pdpC遺伝子のクローニングを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、野兎病菌PdpCタンパク質が病原性に重要な働きをしている可能性を明らかにした。そこで、様々なpdpC遺伝子一部欠損株および変異株を用いて、野兎病菌の高い感染性や病原性との因果関係を解明する事を目的とする。(1)初年度は、野兎病菌PdpCタンパク質が病原性に関与している可能性を確認する為に、テトラサイクリン耐性遺伝子またはGFP挿入によるpdpC欠損株を強毒性SCHU P9株から作出し、マウスに与える病原性について検討を行う予定であった。pdpCの近接領域(上下流500-2000bp)を付加したテトラサイクリン耐性遺伝子のPCR増幅断片またはクローニングしたベクターを用い、様々な形質転換方法で相同組換えを試みたが、テトラサイクリン耐性を保持したpdpC遺伝子破壊株は得られなかった。そこで、グループIIイントロン挿入による能動的pdpC遺伝子破壊株作出法を新たに準備し、前試験において遺伝子破壊株が得られる可能性が示唆された。以上のように、野兎病菌pdpC遺伝子破壊株の作出は、やや遅れている。(2)次年度に予定していたpdpC遺伝子発現プラスミドの作出に着手した。野兎病菌では、遺伝子工学で汎用される大腸菌用プラスミドで形質転換できないことが知られている。そこで野兎病菌・大腸菌シャトルベクターpOM5(8kbp)に、野兎病菌GroELプロモーター(500bp)とpdpC遺伝子(4kbp)を挿入し、クローニングを試みた。しかし、プロモーターのみ挿入した場合はクローニングできたが、pdpC遺伝子を挿入したクローンは得られなかった。これらの遺伝子を挿入したプラスミドの大きさは12kbpを超える事から、プラスミドが不安定化している可能性が考えられた。そこで、pOM5を小型化した新たなプラスミドpNVU01(5kbp)を作出した。
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Strategy for Future Research Activity |
野兎病菌pdpC遺伝子破壊株の作出を最優先課題とし、強毒、弱毒株との比較を行いながら、pdpC遺伝子破壊株の病原性を細胞株やマウスを用いて、その病原性の有無を検討する。pdpC遺伝子破壊株が弱毒化していた場合、一部欠損または変異pdpC発現プラスミドで形質転換した野兎病菌を用いて、同様に細胞株やマウスを用いて、病原性関与領域の決定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において、野兎病菌pdpC遺伝子破壊株の作出は、重要な位置を占めている。グループIIイントロン挿入によってpdpC遺伝子破壊株が得られる可能性が示唆されたので、次年度以降この方法を用いたpdpC遺伝子破壊株の作出を試みる。また、野兎病菌強毒性SCHU P9株、弱毒性SCHU P5株、およびこれらの遺伝子破壊株をマウスに接種し、pdpC遺伝子の病原性関与について検討を行う。また発現プラスミドの作出において、pdpC遺伝子のクローニングは困難を極めている。クローニングが困難な理由として、プラスミドの大きさおよび大腸菌株との相性等が考えられた。そこで、新規に作出したpNVU01を用いたpdpC遺伝子のクローニングや、宿主大腸菌種等を含めてクローニングの様々な検討を行う。次年度の研究費は、これらpdpC遺伝子破壊株の作出や、pdpC遺伝子のクローニング等の遺伝子工学関係の試薬および、その病原性を確認するための細胞・マウス接種実験経費に使用する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Development of competitive ELISA for serosurvey of tularemia among various animal species.2011
Author(s)
Sharma N, Hotta A, Tanabayashi K, Yamamoto Y, Fujita O, Uda A, Mizoguchi T, Shindo J, Park C H, Kudo N, Hatai H, Oyamada T, Yamada A
Organizer
5th Asian Workshop on Zoo and Wildlife Medicine/ Conservation in Nepal 2011
Place of Presentation
ネパール
Year and Date
2011年10月22日