2011 Fiscal Year Research-status Report
形質細胞様樹状細胞のエンドソーム時空間的制御に関与する新規分子の網羅的探索と同定
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23790535
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北脇 年雄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50378684)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 形質細胞様樹状細胞 / I型インターフェロン / 生体防御 / 分子メカニズム |
Research Abstract |
I型インターフェロンは哺乳類の生体防御において必須の役割を果たしているサイトカインである。ヒト形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell: pDC)は,このI型インターフェロンを極めて大量に産生する特別な能力を持っている。我々はpDCがなぜこのような高レベルのI型インターフェロン産生能を持っているのかを明らかにするため,その分子メカニズムを解析するべく研究を進めている。ヒトpDCは,ヒト末梢血白血球中に占める割合が0.5%前後と非常に少なく,解析に必要な数の細胞を入手するのが困難であることが,シグナル伝達機構を含む,pDCの細胞内分子動態の解析において足かせとなってきた。我々はこの状況を打破するため,pDC白血病患者の白血病細胞よりI型インターフェロン高産生性のpDC細胞株を樹立した。形質細胞様樹状細胞白血病由来の細胞株はこれまでにもいくつか樹立されているが,いずれもI型インターフェロン産生能が低く,白血病化あるいは細胞株樹立の過程でpDCの特殊なI型インターフェロン産生機構を構成している分子に何らかの異常を来していることが想定される。我々が樹立したpDC細胞株は大量のI型インターフェロンを産生することから,pDCの正常なI型インターフェロン産生機構を保持しており,pDCにおけるI型インターフェロン産生機構の解析に適している。ただし,この細胞株は継代培養を続けると高レベルのインターフェロン産生能を徐々に失って行くことから培養方法の工夫が必要である。さまざまな培養条件を試した結果,ストローマ細胞株との共培養で高レベルのI型インターフェロン産生能が回復することが分かった。今後,この培養条件で培養した細胞を用い,pDCのエンドソーム時空間的制御に関与する新規分子の同定を主たる目的としてI型インターフェロン産生機構の解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定では,我々が樹立したI型インターフェロン高産生性pDC細胞株にIRF7,NF-κBのレポーターシステムを二重に導入し,その細胞株を用いてpDCのI型インターフェロン産生に関与する新規分子の探索を行う予定であった。しかし,残念なことに,我々のpDC細胞株は継代培養の過程でI型インターフェロン産生能を徐々に喪失し,我々の目的には適さないことになってしまった。形質細胞様樹状細胞由来の細胞株は,他にもいくつか樹立されているが,いずれもI型インターフェロン産生能が低く,I型インターフェロン産生機構の解析に適しているとは言いがたい。このように我々が樹立したpDC細胞株の代替となる細胞株も存在しないため,当初の研究計画を予定通りに進めることが非常に困難になった。以上のような事情から研究計画の遂行が遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が研究に用いることにしていた,我々が樹立したpDC細胞株は,残念なことに,継代培養の過程でI型インターフェロン産生能を徐々に喪失し,我々の目的には適さないことになってしまった。この障害を克服し,我々の当初の研究目的を遂行するためには2つの手段が考えられる。1つは,我々が樹立したpDC細胞株の培養条件を検討し,高レベルのI型インターフェロン産生能を回復させること。もう1つの手段は,次善の策ではあるが,低レベルのI型インターフェロン産生能しか持っていないが,他のpDC細胞株を用いて我々の研究計画を遂行することである。1つ目の手段として,我々はすでに,あるストローマ細胞株と共培養することによりpDC細胞株のI型インターフェロン産生能を回復させられることを見出している。今後,この培養方法を用いて研究計画を進めることができると考えられる。また,2つ目の手段として,代替のpDC細胞株であるCAL-1を用いて研究計画の遂行を試みている。すでにNF-κBレポーターシステムを導入した安定形質転換株の作製に取りかかっており,いくつかのクローン候補を得ている。 以上のように,2つの方法を同時並行で進行させることにより,研究計画の遂行を促進したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,(1)ストローマ細胞株と共培養する培養条件で,我々が樹立したpDC細胞株を培養し,この細胞株からIRF7,NF-κBのレポーターシステムを導入した安定形質転換株を作製すること,(2)この安定形質転換株を用いてretroviral insertional mutagenesisあるいはchemical mutagenesisにより遺伝子変異を導入し,NF-κB活性化経路は正常であるが,IRF7活性化経路には異常を来している細胞のクローンを作製すること,(3)このクローンにおいて突然変異を有している遺伝子を次世代シークエンサーなどを用いて検索し,rescue実験などによってIRF7活性化経路の異常形質の責任遺伝子を同定すること,(4)以上の実験をpDC細胞株CAL-1を用いても行うこと,を計画している。研究費は,(1)の段階において,細胞培養に必要な培養液・培養試薬,I型インターフェロンの産生を確認するためのELISAの試薬,ウイルスベクターの作製,レポーターシステムが妥当性を持って機能していることを確認するためのWestern blottingに必要な試薬の購入に用いる。(2)の段階においては,細胞培養に必要な培養液・培養試薬,突然変異を導入するためのretrovirus,chemical reagentが必要であり,研究費はこれらの物品の購入に用いる。(3)の段階においては,シークエンサー用試薬,rescue実験のためのベクターの作製などに用いる。(4)については,上記(1)~(3)と同様である。以上のように,平成24年度の研究費は主に実験に必要な試薬・物品の購入に充てる予定である。
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