2013 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪酸分画および脂肪酸触媒酵素から考える心血管病予防戦略
Project/Area Number |
23790656
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松井 弘樹 群馬大学, 保健学研究科, 助教 (20431710)
|
Keywords | 脂肪酸分画 / 糖尿病 / 内臓肥満 / 心筋傷害 / 動脈硬化 / 飽和脂肪酸 / 不飽和脂肪酸 |
Research Abstract |
申請者らはこれまで、肥満や糖尿病患者で見られる遊離脂肪酸の量的な増加だけでなく、脂肪酸分画の質的な変化と心血管イベントの発症リスクとの関係に着目してきた。その結果、飽和脂肪酸が心筋傷害や血管石灰化を誘導すること、また、飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に変換する酵素であるStearoyl-CoA Desaturase-1 (SCD1)が、飽和脂肪酸の作用に対して保護的に働くことを明らかにした[Matsui H, et al. PLoS ONE 2012; Kageyama A, et al. PLoS ONE 2013]。 さらに、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の鎖長を伸長させる酵素であるElongation of long chain fatty acid 6 (Elovl6)が、ヒトおよびマウスの血管平滑筋細胞で発現が認められ、動脈硬化初期の新生内膜肥厚部において、発現が著明に増加することを明らかにした。このElovl6の発現増加は、血管平滑筋細胞を増殖型へ脱分化させるPDGF-BB、低酸素刺激によって著明に誘導されることも明らかにした。さらに、培養血管平滑筋細胞にアデノウイルスを用いてElovl6を過剰発現させると、細胞増殖に対して促進的に作用し、この作用には増殖抑制因子であるp21、phospho-AMPK、増殖促進因子であるmTOR、phospho-Aktの発現変化が関わることも見出した。また、Elovl6を平滑筋細胞に過剰発現させ、脂肪酸分画を測定したところ、C16:0の飽和脂肪酸であるパルミチン酸が減少、C18:1不飽和脂肪酸であるオレイン酸が増加し、この変化に一致して、オレイン酸が血管平滑筋細胞の増殖を促進させることを明らかにした。以上より、Elovl6による細胞内脂肪酸分画の変化が、動脈硬化の発症・進展に深く関与していることが示唆された[ESC 2013にて発表]。
|