2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト型抗体を利用したインフルエンザウイルス感染予防に関する研究
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23790660
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
安木 真世 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40589008)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / ヒト型抗体 |
Research Abstract |
インフルエンザワクチン接種者または感染患者の末梢血単核球とフュージョンパートナー細胞SPYMEGとの細胞融合により計47個の抗インフルエンザウイルスヒト型抗体産生ハイブリドーマを作製した。反応性を評価したところ10個の広域中和抗体(抗A型抗体7個ならびに抗B型抗体3個)と10個の狭域中和抗体(抗H1抗体4個、抗H3抗体3個ならびに抗パンデミックH1抗体3個)が含まれていた。 広域中和抗体の研究ではヒト型抗体の報告がないB型ウイルスに焦点を当て詳細な性状解析ならびにエピトープマッピングを行った。3個の抗体は全てウイルス膜タンパク質HAを認識した。抗体3A2と10C4は2系統に分かれるB型ウイルスのうち山形系統のみに強い中和能を示し、またエスケープミュータントの作出から、HAタンパク質の受容体結合部位近傍に位置する190helixがエピトープであることが明らかとなった。この領域は変異が入りやすいためペプチドワクチンの候補抗原としては不適合であると判断した。一方抗体5A7はB型ウイルスの両系統共に中和能を示した。 狭域抗体の研究では、発生当初ほとんどの人が特異抗体を持っておらず、そのため現在まで明らかな抗原変異が出現していない2009パンデミックH1ウイルスを研究対象とし、それに対する特異抗体を選択した。3個のハイブリドーマの性状解析からHAタンパク質を認識する2個に対象を絞りエスケープミュータントを作出した。その結果、両抗体とも受容体結合部位近傍に位置する抗原決定基Sbがエピトープであることが明らかとなった。過去の報告からその領域は変異が起こりやすいと予想されたので、この抗体を用いて研究を進行した。また2009年春・2009/10の分離ウイルスに加え、2010/11シーズンにも府下のクリニックの協力の下、インフルエンザ感染患者の鼻腔スワブ検体を入手しウイルスを分離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の目標として中和抗体の作製、樹立ハイブリドーマの性状解析ならびにエピトープ同定、エスケープミュータントの作製、そして流行ウイルス株の分離を掲げて研究を進めた。上記の通り、おおむね目標に沿った成果を得ることができたため、順調に進展していると判断した。 ヒト型中和抗体の作製において当初ワクチン接種ボランティアから採取された末梢血単核球を用いた。しかしハイブリドーマ作製効率が非常に悪く(のべ30名のボランティアから11個の抗体)、方法の改善がせまられた。そこで感染患者の単核球を用いたところ作製効率が飛躍的に改善された(2名の患者から36個の抗体)。この改善により本研究を進めるために必要なハイブリドーマをより多く準備することができた。ハイブリドーマの性状解析のための認識タンパク質の同定ならびに中和能評価は、既に研究室内で確立された技術を用いることで迅速に進められた。一方、その後のエピトープ同定・エスケープミュータント作製には時間を要し、現在までに対象広域抗体10個中2個、狭域抗体2個中2個の同定が終了した。現在までにペプチドワクチンの抗原として適した抗体エピトープは定まっておらずペプチド合成には至っていない。また狭域抗体のエピトープ部位について異なるエピトープに対する抗体を期待したが結果は同領域を認識していた。流行ウイルス株の分離では府下の病院の協力の下スムーズに検体を収集することができた。しかし2011/12シーズンは対象となる2009パンデミックH1ウイルスの流行は見られず検体を採取することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
広域抗体においては、B型ウイルスに対して広域な中和能を示す抗体5A7のエピトープマッピングを早急に完了させ、保存性の高さならびに新規性を評価した上でペプチドワクチンの候補としてペプチド合成ならびにその評価を行いたい。また抗A型抗体ではエピトープ同定ならびに鳥型ウイルスへの中和能の評価を行った上、現在までに報告されているヒト型抗体と区別化できるか、新たなるペプチドワクチン候補となりうるのか評価する。その後ペプチドの合成に進みin vitroならびにin vivoでのペプチドワクチンの有用性を検討する。 狭域抗体の研究では既に分離されているウイルス株を用いてヒト型抗体との反応性をHIならびに中和試験で評価する。またHA遺伝子配列を決定しSb領域の変異とHI・中和試験との相関性を検討する。比較対象として、ポリクローナル抗体である感染フェレット標準血清(既に国立感染症研究所より分与済)を用いて同試験を行う。それらデータを基に、今後ターゲットである抗原決定基Sbの変異株が増加するのか予測する。最終的に2012/13シーズンの流行株を分離しヒト型抗体との反応性ならびにHA遺伝子配列におけるSb領域の変異出現頻度を確認し、予測が合致したのか評価し、本研究の実験系が抗原変異予測に有用であるか検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に引き続き、必要な経費は実験用消耗品費、得られた成果の発表に関する経費が主である。作製した中和抗体産生ハイブリドーマの維持ならびに分離ウイルス培養のために、細胞培養試薬ならびにプラスチック製品が必要である。エピトープ同定においてはウイルスからのRNA抽出・RT-PCR・プラスミド作成・細胞への導入、シークエンス解析を行うため、その試薬、キットならびにプラスチック製品が必要となる。ペプチド合成・抗体精製には蛋白精製関連製品が必要であり、またペプチド合成を受託した場合にはその費用が発生する。in vivoの実験においてはマウスならびに飼育経費が必要となる。情報収集ならびに得られた成果の情報発信のため、学会における成果発表を予定しており、国内・外旅費はそのために必要である。さらには得られた成果の論文投稿のため、その経費が必要である。また報告者は平成24年3月に大阪大学から大阪府立大学に所属変更した。H24年度は本研究に関わるミーティングや実験手技の移転、一部の実験のため共同研究先である大阪大学への出張が必要であり、そのための出張旅費が必要である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 2009 pandemic influenza A (H1N1) viruses with D222G and Q223R hemagglutinin mutations exist as a minor population in human upper airways
Author(s)
Nayaka T, Yasugi M, Nakamura S, Daidoji T, Ramadhany R, Yang CS, Yasunaga T, Iida T, Horii T, Ikuta K, Takahashi K
Organizer
International Union of Microbiological Societies 2011 Congress
Place of Presentation
札幌
Year and Date
2011年9月15日
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