2011 Fiscal Year Research-status Report
ジメチルアセトアミド曝露による肝障害発生メカニズムと個体差要因の解明
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23790681
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
柳場 由絵 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 研究員 (90467283)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジメチルアセトアミド / 肝機能障害 / CYP2E1 / 有機溶剤 / 酸化ストレス / 個体差要因 / 炎症 / 毒性メカニズム |
Research Abstract |
ジメチルアセトアミド(DMAC)は、ポリウレタン繊維の重合用溶剤、樹脂や医薬品などの反応溶剤、洗浄剤として工業的に幅広く使用される溶剤である。従来の許容濃度と同等レベルで肝障害に陥る可能性のあるジメチルアセトアミド(DMAC)について次の2つのことを検討する。1) DMACの代謝に係ることが推察される薬物代謝酵素(CYP2E1)遺伝子に注目し、DMAC曝露によるCYP2E1を介した肝障害発生メカニズムの解明、2) DMAC職域曝露者と非曝露者を比較し、肝障害発生とCYP2E1多型による個体差要因の検証を通じて、DMAC曝露による高危険群の設定を行う。これらの結果を、労働者の安全と健康を維持するためにDMAC曝露による毒性メカニズムを明らかにし、曝露に対する予防方法の確立や許容濃度の再評価、管理濃度の策定を行うための資料として役立てる。H23年度の計画は、1)DMAC2週間吸入曝露による肝障害の発生について、炎症マーカーやその標的遺伝子アポトーシス関連遺伝子、酸化ストレス等について解析を行う。また、DMACの尿中代謝物(曝露のバイオマーカー)を測定する。2)野生型、CYP2E1ノックアウトマウスを用いたDMAC吸入曝露実験を行い、DMACの毒性発現に対するCYP2E1遺伝子の関与を明らかにすると同時に、肝障害などの発生機序を解明する。現時点においての進捗状況としては、野生型マウスを用いDMAC濃度を0,10,25,50,250ppmに設定し、吸入曝露実験を行った。曝露により全ての曝露濃度でCYP2E1-mRNAの誘導が観察された。現在、野生型、CYP2E1ノックアウト型マウスを用いて2週間の吸入曝露実験を実施している。また、曝露終了後、肝臓及び血液サンプルを用い解析を行う予定である。また、これらの解析の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年の3月11日の大震災に伴う科研費交付の遅延などの影響や、夏季の節電対応により動物施設の使用が制限されたため、動物実験の開始時期が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように動物実験の開始が遅れたため、H23年度実施予定であったCYP2E1ノックアウト型マウスを使用しての吸入曝露実験をH24年度に実施している。そのため、H24年度に計画していた曝露形態(曝露時間・濃度)と肝機能障害の発生を明らかにするための吸入曝露実験の実施は、マウスの繁殖状況から今年度の秋以降になる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の平成25年度の研究費の使用計画について、現時点においては次のように考えている。DMACを使用する職域曝露者と非曝露者の現地調査を行い、健康状態、肝機能値等を測定する。また、DMACの個人曝露測定を行うために尿中代謝物N-メチルアセトアミドを測定し、健康状態や肝機能値と代謝物量反応関係を求める。また、DMAC曝露と代謝酵素多型との関係を明らかにすることを計画している。したがって、調査参加者への謝金や調査打合せのための旅費、そして研究成果の発表にかかる費用が主な研究費の使用内容となると考えられる。
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