2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS/ES血管誘導技術によるヒト血管分化機構の解析と疾患iPS研究への応用
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23790847
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曽根 正勝 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40437207)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 幹細胞 / iPS細胞 / ES細胞 / 血管 / 再生医療 |
Research Abstract |
我々がこれまで開発してきたヒトiPS/ESからの血管構成細胞分化誘導系を用いて各種薬剤や細胞外マトリクスの働きを解析し、ヒトiPS/ES→中胚葉→血管前駆細胞→血管構成細胞へと至る血管分化過程において、細胞外マトリクスの違いにより細胞の接着効率と分化誘導効率が異なることがわかった。また、ヒトES細胞から血管構成細胞に至る過程でのステップバイステップでの遺伝子発現の解析において、エンドセリン、アドレノメデュリン、ナトリウム利尿ペプチドなどの各種血管ホルモンとその受容体の発現が経時的に変化することがわかり、現在それらの意義について検討中である。また、成人大動脈血管内皮細胞、伏在静脈血管内皮細胞などとヒトiPS/ES由来の血管内皮細胞の遺伝子発現を比較解析したところ、我々の血管分化誘導法で誘導したヒトiPS/ES由来血管内皮細胞はCXCR4、DLL4等の発現が成人の動脈内皮細胞と同等以上に高く、静脈内皮細胞より動脈内皮細胞の系統に分化していることが示唆された。また、血管障害疾患の疾患特異的iPS細胞については、大動脈炎症候群、冠攣縮性狭心症について患者の同意を得て線維芽細胞の採取を行い、最近CiRAで開発されたエピゾーマルベクターを用いたゲノムへの外来遺伝子の挿入のない手法を用いてiPS細胞を樹立し、現在クローンの選別を行っているところである。また、他グループとの共同研究にて我々が開発したヒトiPS/ESからの血管構成細胞分化誘導系を用いて協力を行い、動脈瘤を伴う多発性嚢胞腎、もやもや病などからの血管構成細胞分化誘導にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々がこれまで開発してきたヒトiPS/ESからの血管構成細胞分化誘導系を用いて各種薬剤や因子の働きを解析し、細胞外マトリクスやある種の薬剤により細胞の接着効率と分化誘導効率が異なることを見出しており、一定の成果を得ている。シェア-ストレスなどの血流による物理刺激の血管分化誘導における働きについては、シェア-ストレスが血管細胞の接着に影響を与えてしまい、まだ解析途上である。また、血管分化過程における遺伝子発現の解析により、我々の手法で誘導されたヒトiPS/ES由来血管内皮細胞が静脈内皮細胞より動脈内皮細胞に近い性質を持っていること、各種血管ホルモンやその受容体の発現が血管分化過程でステップバイステップで変化することを見出し、ヒトiPS/ES由来血管細胞の位置づけの検討や、ヒトiPS/ES血管分化系についての知見を深めることに一定の成果を得ている。各種血管障害性疾患からの疾患iPS細胞の樹立については、大動脈炎症候群、冠攣縮性狭心症について患者の同意を得て線維芽細胞の採取を行い、iPS細胞株の樹立を行い、現在クローンの選別を行っているところである。また、他グループとの共同研究においては、我々が開発したヒトiPS/ESからの血管構成細胞分化誘導系を用いて動脈瘤を伴う多発性嚢胞腎、もやもや病などからの血管構成細胞分化誘導にも成功しており、それらの疾患iPSから誘導された血管構成細胞では健常人iPS細胞由来血管構成細胞と比べて特異的な遺伝子発現の差異や細胞機能の差異が見出されており、我々がこれまで科学研究費補助金を用いて行ってきた血管分化誘導研究の成果の応用に関しては、当初の予想以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の引き続き、ヒトiPS/ESからの血管構成細胞分化誘導系のさらなる改良、およびそれらの系を用いて血管分化過程における血管ホルモンとその受容体の意義についての解析を行う。ヒトiPS/ESから血管構成細胞に至る遺伝子発現の変化の網羅的な解析や、各種薬剤や環境の血管分化に与える影響の解析も引き続き行う。平成23年度に樹立した血管障害性疾患iPS細胞各クローンについて、テラトーマ形成能や分化能、カリオタイプやエピジェネティクスなどその品質を確認し、解析に使用可能なiPSクローンを各疾患複数ライン樹立する。これまで確立してきたヒトiPS/ES血管分化誘導法を用いてそれら疾患iPS細胞から血管内皮細胞と壁細胞を分化誘導し単離を行い、その遺伝子発現および細胞機能を健常人iPS由来の血管構成細胞と比較し、その病態を探る。それら疾患iPS細胞由来の血管内皮細胞、壁細胞で見出した遺伝子発現の異常について、その機能的意義を解析する。さらに、それら疾患iPS細胞由来の血管内皮細胞、壁細胞で見出した遺伝子発現の異常について、それらの発現の診断マーカーとしての応用を模索すると同時に、それら分子を標的とする薬剤の開発によりそれら疾患の血管障害の治療・予防の可能性を探る。また、それら各種血管障害疾患iPS細胞を用いて様々な先天疾患における血管障害の発生機序を探り、それら個々の結果を統合・俯瞰することにより、長期的には生活習慣病血管合併症のようなより一般的な血管障害における早期診断や治療の標的分子を見出すことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒトiPS/ESからの血管構成細胞分化誘導系のさらなる改良ヒトiPS/ESから血管構成細胞に至る遺伝子発現変化のデーター解析血管分化過程における血管ホルモンとその受容体の意義および各種薬剤の作用の検討血管障害性疾患iPS細胞の樹立と品質確認血管障害性疾患iPS細胞由来血管構成細胞の分化誘導・単離と解析
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Induced pluripotent stem cells generated from diabetic patients with mitochondrial DNA A3243G mutation.2012
Author(s)
Fujikura J, Nakao K, Sone M, Noguchi M, Mori E, Naito M, Taura D, Harada-Shiba M, Kishimoto I, Watanabe A, Asaka I, Hosoda K, Nakao K.
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Journal Title
Diabetologia
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Significance of adrenocorticotropin stimulation test in the diagnosis of an aldosterone-producing adenoma.2011
Author(s)
Sonoyama T, Sone M, Miyashita K, Tamura N, Yamahara K, Park K, Oyamada N, Taura D, Inuzuka M, Kojima K, Honda K, Fukunaga Y, Kanamoto N, Miura M, Yasoda A, Arai H, Itoh H, Nakao K.
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Journal Title
J Clin Endocrinol Metab.
Volume: 96(9)
Pages: 2771-8
Peer Reviewed
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