2011 Fiscal Year Research-status Report
急性腎障害における肺腎相関の病態解明と診断マーカーとしてのミッドカインの臨床応用
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23790967
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
林 宏樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10378086)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 急性腎障害 / AKI:acute kidney injury / 臓器連関 / 肺腎クロストーク / ALI/ARDS / AKIバイオマーカー / ミドッカイン |
Research Abstract |
(研究1)ICU領域におけるAKIの疫学研究:名古屋大学医学部附属病院ICUに入室した症例(n=2582)を対象とした解析では, AKIN分類およびKDIGO分類におけるAKIの発症率はそれぞれ29.6%, 38.5%であった. 多変量ロジスティク解析において, AKIは院内死亡に対して関連性がみられ, AKIの重症度に従って, オッズ比の上昇が認められた. 院内死亡に対するROC(receiver operating characteristic)曲線下の面積は, AKIN分類: 0.73, KDIGO分類: 0.76であった. これまで本邦で報告の乏しいAKIの実態を, 本研究で明らかにした.(研究2)急性期肺腎クロストークの検討:非侵襲的陽圧呼吸管理(NPPV)導入となったALI/ARDS症例のうち、NPPV導入日もしくはその翌日に気管支肺胞洗浄を施行した52症例を対象とし、気管支肺胞洗浄液中の、炎症細胞(Neu.,MΦ)、向および抗炎症性メディエーター(IL-1β,sTNF-α,IL-6,IL-8,IFN-γ,MCP-1,IL-10)、血管内皮傷害マーカー(TM)、肺胞上皮傷害マーカー(SP-D)、接着分子(ICAM-1)、凝固マーカー(PAI-1)の測定を行い、AKIの有無によるプロファイルの違いを示した。AKIの存在が上記メディエーターのdysregulationを介し、非心原性肺水腫の病態であるALI/ARDSの肺局所におよぼす影響を明らかにした。 (研究3)尿中ミドッカインのAKIバイオマーカーとしての有用性:基礎研究において尿細管上皮障害マーカーとなることが示されているミッドカインに注目し、実地臨床でAKI診断のバイオマーカーとなり得るか検証するための臨床サンプル収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(研究1)ICU領域におけるAKIの疫学研究:解析が終了し論文投稿間近である。(研究2)急性期肺腎クロストークの検討:大部分の解析が終了し、国際学会発表の準備を進めるとともに、論文作成中である。(研究3)尿中ミドッカインのAKIバイオマーカーとしての有用性:平成23年度に検体収集の目途をたてた。平成24年度も引き続き検体収集を継続し、目標症例数に達したら測定、解析をおこなう準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(研究1)ICU領域におけるAKIの疫学研究:論文投稿を進める(研究2)急性期肺腎クロストークの検討:論文作成を進める。(研究3)尿中ミドッカインのAKIバイオマーカーとしての有用性:収集したサンプル中の、ミッドカイン、既知バイオマーカー(NGAL、IL-18、L-FABP、NAGなど)を一気に測定する。a. 鑑別診断能に関する検証では、AKIと他の腎疾患との鑑別診断能をROC曲線解析し、バイオマーカー間の比較を行う。b. 早期診断能に関する検証では、AKI群とnon-AKI群のバイオマーカー推移を経時的に比較し、各バイオマーカーの特性を見出す。c. 予後推定能に関する検証では、集中治療室入室時に採取したサンプル中のミッドカイン値から、生命予後・腎予後を検証するためのROC曲線解析を行う。 以上の結果は、単にバイオマーカーの優劣を明らかにするのでなく、それぞれの特性を踏まえ、複数のバイオマーカーをパネル化することによって、より正確な診断方法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の75%を研究に使用する消耗品に計上した。尿および血中におけるミッドカイン・既知のバイオマーカー(NGAL、IL-18、L-FABP、NAGなど)、RAS (renin, angiotensinogen, ACE, AT-I, AT-II)・ケモカイン(MCP-1, TNF-α, IL-6 etc.)・接着因子(ICAM-1)などの発現を検討するために、ELISAキット、マルチプルサイトカインアレイキット、プラスティク器具の購入を予定している。また経費の20%を各種調査・研究の打合せ、研究成果の発表に関する国外の学会のための旅費・及び論文作成費用として計上した。各種調査・研究の打合せの経費が高額であるが、本研究は多方面から生体サンプルおよび臨床データーを収集する必要がある。
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[Journal Article] 急性期の腎・肺相関(第2報) AKIがALI/ARDS症例の肺胞局所に及ぼす影響の検討2011
Author(s)
林宏樹, 杉浦祥代, 小杉智規, 佐藤和一, 丸山彰一, 小出滋久, 村上和隆, 鍋島邦浩, 富田亮, 長谷川みどり, 松尾清一, 湯澤由紀夫
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Journal Title
日本腎臓学会誌
Volume: 53
Pages: 411
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