Research Abstract |
本邦でいまだ認識が不十分であるAKIの重要性を示すため, まずICU領域におけるAKIの疫学研究をおこなった. 名古屋大学病院ICU入室患者(n=2582)を対象にうしろ向き研究を行い, AKIN分類及びKDIGO分類におけるAKIの発症率はそれぞれ29.6%, 38.5%であった. 多変量ロジスティク解析において, AKIは院内死亡に対して関連性がみられ, AKIの重症度に従って, オッズ比の上昇が認められることを明らかにした. 次にAKIにおける腎と他臓器連関について肺に着目した. 気管支肺胞洗浄を行った重症呼吸不全(ALI/ARDS)52例の検討を行った. 46%がAKIを呈したが, ピークのCr値が高々1.38±0.63mg/dl程度のAKI群で人工呼吸管理(NPPV)失敗が有意に高率であった(83% vs. 46%, P=0.009). ALI/ARDSの誘因となった肺内・肺外の病因には両群で差を認めないにもかかわらず, 気管支肺胞洗浄液中の好中球数はAKI群で有意に上昇していた. ケモカイン/サイトカインのプロファイルは大きく異なり, IL-6, IL-8, IL-10, IIFN-γ, MCP-1, PAI-1は有意に人工呼吸管理失敗に関連した. ヒトにおいても, AKIにより, 肺局所でのケモカイン/サイトカインの dysregulationを介して, 非心原性肺水腫に寄与する可能性が示唆された. さらにAKIの早期診断のため, 尿中ミッドカインのAKIバイオマーカーとしての有用性を検討した. 開心術後AKI, 部分腎摘出術後AKI, 腎移植後AKI(delayed graft function)でCr変動に先立ち, 尿中ミッドカインの上昇をみとめた. 現在ミッドカインのAKI診断薬としての検証を継続している.
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