2011 Fiscal Year Research-status Report
組織特異的ペプチドを用いた神経疾患への分子治療法および体外イメージングの開発
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23790988
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
寺島 智也 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40378485)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 組織特異性 / 運動神経細胞 / 後根神経節細胞 / ターゲッティング / 分子治療 |
Research Abstract |
脊髄特異的ターゲッティングペプチドの同定脊髄前角細胞特異的結合ペプチドを同定するために、ランダムファージライブラリー(C7C Phage library (NEB)) のファージ1012 個を用いて、in vivo ファージディスプレイを行った。C57/BLマウスにファージライブラリーを注射し、脊髄組織を回収するバイオパンニングを5回繰り返し、結合力の高いファージのシークエンスを検索すると伴に、脳、脊髄、心臓、肝臓、腎臓を取り出し、結合頻度について検討を行った。 [結果1]in vivoファージパンニングを5回繰り返すことにより、1回目のライブラリー投与に比べ、2~5回目で、回収されるファージ量は漸増し、5回目終了で1回目の約1000倍の量のファージが回収された。 [結果2]5回で得られたファージの組織結合部に相当する遺伝子をシークエンスすることにより、2つの親和性の高い配列候補が同定された。配列Aは、全体の約42%で、配列Bは、全体の21%で認められ、いずれも高頻度に存在することが示された。 [結果3]配列AおよびBを含むファージを増幅させ、単一のファージの1012 個をそれぞれ、マウスに注射し、脳、脊髄、心臓、肝臓、腎臓を取り出して、ライブラリーに対する親和性の変化を検討したところ、配列A、配列Bでは、単位重量あたり、脊髄組織で最も高い親和性を示し、ライブラリーに比し、1000から10000倍の高親和性を示した。他臓器については、配列Aでライブラリーと同程度、配列Bでは、ライブラリーの数倍から10倍程度の親和性を認めたが、脊髄に対する親和性には、遠く及ばなかった。以上より、現在までに、脊髄組織特異的結合ペプチド2つを同定した。しかし、前角細胞特異的な配列は、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション後にファージをうまく回収することができないため、同定に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脊髄全体に特異性のあるペプチド候補は同定できたが、前角細胞のみを標識するペプチドはまだ同定できていない。何度かレーザーキャプチャーマイクロダイセクションで、前角細胞を取り出し、ファージの回収を試みたが、有意な数のファージを得られず、結果を得るに至っていない。レーザーの出力や切り出す範囲を変更するなどの工夫を試みたが、結果は同様であった。これは、ファージが死滅するためと考えており、方法論の修正が必要と考えられた。上述の理由により、当初の計画よりやや遅れ気味で進行している状況であるが、十分目標を達成できる範囲と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄全体に特異性のあるペプチド候補は同定できたが、前角細胞を標識するペプチドは同定できていない。ファージを生きたまま回収することは断念し、回収した前角細胞よりDNAを抽出し、ファージの遺伝子配列を検索する方針へと変更して、前角細胞特異的ペプチドの同定を行っていく。前角細胞特異的結合ペプチドの同定に成功すれば、その後の、イメージングや分子治療への応用を逐次行う予定である。ただ、前角細胞特異的結合ペプチドの同定までに時間を要する可能性もあり、現在までに同定済みの配列AおよびBによる脊髄全体への分子イメージングや治療への応用も平行して、推進することとした。その前段階として、以前同定した後根神経節特異的結合ペプチドおよび今回の脊髄特異的結合ペプチド(配列AおよびB)のペプチド合成を業者に委託し、そのペプチドを得れば、マウスへの全身投与にて、脊髄への親和性の定量および結合細胞種(神経細胞、グリア細胞など)や細胞径による結合率の差、領域(脊髄前角、側索、後角など)による局在、結合頻度などの検討を行い、治療や画像検査への応用が可能であるかを評価し、その場合、どのような疾患や状態の評価に有用かを決定する方針である。実験が順調に進行した場合、25年度予定であるモデル動物でのイメージングや分子治療への準備、検討へと移行したいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前角細胞のペプチド同定のために、レーザーキャプチャー消耗品やDNA抽出試薬、シークエンス代がさらに必要であり、ペプチドの脊髄への親和性および結合細胞の分類、頻度などの検討のために、後根神経節特異的結合ペプチド(3種)および脊髄特異的結合ペプチド(現在2種)の合成委託と標識試薬(ペプチドの蛍光標識キットや光学顕微鏡観察時のDAB基質)が必要である。また、表面マーカーとの局在比較のための各種マーカー(神経やグリア標識用)の一次抗体、組織標本作製に必要な試薬、スライドなど一式も購入予定である。また、ペプチド投与、検討用のマウス(C57/BL6)も必要であり、以上が主に必要な物品であり、すべて物品費として研究費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Inactivation of TNF-α ameliorates diabetic neuropathy in mice.2011
Author(s)
Yamakawa I, Kojima H, Terashima T, Katagi M, Oi J, Urabe H, Sanada M, Kawai H, Chan L, Yasuda H, Maegawa H, Kimura H.
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Journal Title
American Journal of Physiology. Endocrinology and Metabolism.
Volume: 301
Pages: E844-E852
Peer Reviewed
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[Journal Article] Interleukin-7 induces recruitment of monocytes/macrophages to endothelium.2011
Author(s)
Li R, Paul A, Ko KW, Sheldon M, Rich BE, Terashima T, Dieker C, Cormier S, Li L, Nour EA, Chan L, Oka K.
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Journal Title
European Heart Journal.
Volume: In press
Pages: In press
DOI
Peer Reviewed
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