2011 Fiscal Year Research-status Report
HES1による骨髄性白血病幹細胞の発生および維持の機序の解明
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23791068
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂田 麻実子 (柳元 麻実子) 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80451805)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Hes1 / MLL白血病 / レトロウイルス / 腫瘍抑制因子 |
Research Abstract |
[目的] 我々のこれまでの研究結果から、慢性骨髄性白血病の急性転化においては、Hes1は腫瘍促進因子として働いている。今回の研究では、急性骨髄性白血病におけるHes1の役割を明らかにするために、急性骨髄性白血病マウスモデルを用いて研究を行った。[方法] Hes1ノックアウトマウス(Hes1-KO)由来胎仔肝およびコントロールマウス由来胎仔肝(control)にレトロウイルスを用いて白血病遺伝子MLL-AF9を導入し、放射線照射した同系マウスへ移植した。さらに、野生型マウス由来骨髄にMLL-AF9とドミナントネガテイブHes1(dnHes1)を同時に導入し、移植した。[結果] MLL-AF9-Hes1-KO移植マウスはMLL-AF9-contorol移植マウスより早期に白血病により死亡した。MLL-AF9-dnHes1移植マウスはMLL-AF9-control移植マウスより早期に白血病により死亡した。MLL白血病ではMEIS1が白血病化を促進する重要なメデイエーターの一つとして知られる。MLL-AF9-Hes1-KOではMLL-AF9-controlに比較してMEIS1の発現が約5倍に上昇していた。[結論] Hes1はMLL白血病において、腫瘍抑制因子として働いていることが明らかとなった。下流のメカニズムはHes1によるMEIS1の発現抑制である可能性が示唆された。[考察] Hes1は骨髄性腫瘍において、腫瘍抑制因子として働く場合と腫瘍促進因子として働く場合があることが明らかとなった。今後は、それぞれの場合における下流のシグナルネットワークを明らかにすることにより、骨髄性白血病の発症メカニズムを明らかにし、Notch-Hes1制御による白血病の治療戦略を構築することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回の研究では、これまでの慢性骨髄性白血病急性転化のマウスモデルに関する知見から、Hes1は腫瘍促進遺伝子であると考えて研究を進めてきた。しかしながら、これまでの研究の過程で、Hes1は急性骨髄性白血病の一つであるMLL白血病において、腫瘍抑制因子として働いていることが明らかとなった。すなはち、Hes1は骨髄系腫瘍において、腫瘍促進因子と腫瘍抑制因子の双方向に働く。 したがって当初予定していた比較的限定的な研究計画を修正し、より広がりをもった研究を計画し、広範囲にわたる研究を進められる可能性が大いにある。
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Strategy for Future Research Activity |
[推進方策] 1年目の研究において、MLL白血病においては、Hes1は腫瘍抑制因子として働くことが明らかとなった。今後は、様々な白血病モデルを用いて、Hes1が腫瘍促進因子あるいは腫瘍抑制因子のいずれとして働くかについて明らかにし、それぞれの白血病におけるNotch-Hes1経路による制御方法を探索する。[研究計画] 多様な白血病原因遺伝子をHes1ノックアウトマウスおよびコントロールマウス由来造血前駆細胞へレトロウイルスを用いて導入する。放射線照射した同系マウスへ移植し、白血病発症および生存曲線を調べる。また、白血病遺伝子をドミナントネガテイブHes1と同時に野生型マウス由来造血前駆細胞へ導入し、放射線照射したマウスへ移植する。これにより、それぞれの腫瘍モデルにおいて、Hes1が腫瘍促進因子、腫瘍抑制因子のいずれとして働くかについて、明確に区別することが可能である。さらには、ヒト白血病患者検体を用いて、Hes1をノックダウン、あるいはHes1遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞の増殖、アポトーシスがどのように変化するかについて明らかにする。[研究における課題] Hes1は腫瘍促進因子としても、腫瘍抑制因子としても働きうることから、下流のシグナルネットワークについても両方向に広がっていることが想定される。これまでの我々の研究により、慢性骨髄性白血病急性転化において腫瘍促進因子として働く場合はHes1-Id3経路が重要であり、MLL白血病において腫瘍抑制因子として働く場合はHes1-MEIS1が重要であることが示唆されている。今後はマイクロアレイなどを用いて、それぞれの場合における下流のネットワークを詳細に明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1ノックアウトマウスの維持費および移植に使用するマウスの購入費2造血前駆細胞を単離するための抗体や、白血病細胞をin vitroで培養するためのサイトカイン、プラスチックウエア3研究交流のための国内および国際学会参加に要する旅費
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Research Products
(14 results)