2011 Fiscal Year Research-status Report
イノシトールリン脂質代謝による喘息病態制御と新規治療薬開発の探究
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23791097
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
竹田 正秀 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30466594)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 喘息 / 好酸球 / PI3Kgamma / イノシトールリン脂質 / アレルギー |
Research Abstract |
喘息の病態にはアレルギー性気道炎症が深く関わっている。好酸球は主要な炎症細胞のとして、喘息の病態形成に重要な役割を果たしている。我々は以前、生体の細胞膜に豊富に存在するイノシトールリン脂質代謝に関わるPI3Kgamma着目し、PI3Kgammaのノックアウトマウスでは喘息病態が形成されず、特に気道への好酸球集積が有意に低下していることを報告した。この動物実験の知見から、PI3Kgammaが好酸球の集積を介して喘息の病態形成に関与していることが示唆される。このことを背景にヒト好酸球においてもPI3Kgammaが細胞機能発現に関与しているかを、選択的阻害薬を用いて検討した。 その結果、好酸球の遊走因子である、eotaxinに対する遊走反応が好酸球を選択的PI3Kgamma阻害薬で前処理することで有意に抑制される結果を得た。このメカニズムについて、eotaxinの受容体であるCCR3発現および遊走に関わるシグナル経路であるERK1/2のリン酸化に対する影響を検討したところ、選択的PI3Kgamma阻害薬は好酸球上のCCR3の発現には影響を及ぼさなかったものの、ERK1/2のリン酸化については有意に抑制をすることが認められた。さらに、eotaxinによる好酸球の脱顆粒反応について、顆粒蛋白EDNの放出をELISA法で検討したところ、選択的PI3Kgamma阻害薬によりEDN産生が有意に抑制された。 以上のことから、PI3Kgammaは、アレルギーの病態形成にかかわる好酸球の局所への集積や活性化にヒトにおいても関与していることが示唆された。本研究による知見は、喘息の病態解明のみならず、治療的観点からも阻害薬の可能性を示すものであり、臨床的な意義も大変深いものであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は2点に集約される。すなわち、(1)PI3Kgammaの喘息病態への影響を動物実験でさらに詳細に検討すること、(2)ヒト好酸球の細胞機能におけるPI3Kgammaの役割を明らかにすること、である。 ヒト好酸球細胞機能に対するPI3Kgammaの関わりについては、「研究実績の概要」のとおり、選択的PI3Kgamma阻害薬を用いることで遊走因子であるeotaxinに対する好酸球の遊走能および活性化が抑制されるという結果が得られており、おおむね順調に進展している。 PI3Kgammaの喘息病態関与への詳細な解析については、好酸球をはじめとした血球細胞、気道上皮細胞などに代表される組織構成細胞のどちらに存在するPI3Kgammaが病態形成に関与するかを、PI3Kgammaのノックアウトマウスを用いて放射線照射による骨髄キメラマウスを作製し、検討することを目的としている。この解析に関しては、PI3Kgammaのヒト好酸球へのさらなる機能解析に加えて、次年度の研究課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト好酸球細胞機能に対するPI3Kgammaの関わりについてさらに検討を進める。具体的には、好酸球の局所への集積に重要な反応である、「接着」に注目し、eotaxinによる好酸球の接着分子の発現ならびに接着能について検討を加える。接着分子の発現について、flow cytometerを用いて測定し、接着能に対しては、ICAM-1をコートしたプレートに対する接着細胞数をカウントすることで検討する。さらに、好酸球の活性化機構として活性酸素(ROS)産生に対するPI3Kgammaの関わりについて検討を加える。具体的には、eotaxin刺激による好酸球からの活性酸素放出に対する選択的PI3Kgamma阻害薬の影響をルミノールを用いたケミルミネッセンス法により検討・解析する予定である。本研究を通して、PI3Kgammaの好酸球(1)遊走(2)接着反応(3)脱顆粒反応(4)活性酸素放出反応への関わりを明らかにすることができれば、選択的阻害薬が新たな治療薬となりえる可能性を示すことができ、意義の深い研究となると考えられる。加えて、PI3Kgammaの喘息病態への関与について、さらに深く検討するために、PI3Kgammaノックアウトマウスを用いた骨髄キメラマウスの作成を行うことで、検討を行う。具体的には、気道抵抗、気管支肺胞洗浄液中の細胞分画の測定を行ったのち、気管支肺胞洗浄液中の各種サイトカインの測定をELISA法を用いて行う予定である。以上の実験により、血球細胞・組織構成細胞のどちらに存在するPI3Kgammaが喘息病態に関わっているかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記研究の推進方策の実施のため、「ヒト好酸球細胞機能に対するPI3Kgammaの関わり」に関する検討については、ヒト好酸球選択的分離に必要な各種抗体、試薬の購入に研究費を使用する予定である。また、ヒト好酸球細胞機能の解析のためにも、接着分子発現測定や、活性酸素の測定のために、各種抗体が必要となる。また選択的PI3Kgamma阻害薬をはじめとした実験試薬も必要となることが予想される。そのため、これら抗体・試薬の購入のために、研究費を使用する予定である。 一方、「PI3Kgammaの喘息病態への関わりについてのさらなる検討」のためには、実験用マウスの購入が必要となる。マウスの購入費・維持費について研究費を使用するとともに、その後の解析に必要な各種抗体・試薬およびELISAキットの購入に研究費を使用する予定である。 また、「研究実績の概要」にも示した通り、特にヒト好酸球細胞機能に対するPI3Kgammaの役割については、研究成果が出てきており、国内外の学会で発表することによって広く研究成果を報告する予定である。そのための旅費として、研究費を使用する予定である。そのほか、次年度は国際誌への論文投稿を目標としている。そのため、校正など、論文作成に関わる諸経費を計上する予定である
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[Presentation] 好酸球細胞機能におけるPhosphoinositide 3-kinaseγの関わり2011
Author(s)
齊藤由紀子,竹田正秀,伊藤亘,木原純子,植木重治,小林良樹,守時由起,糸賀正道,今野泰典,茆原真実,萱場広之,茆原順一
Organizer
第61回日本アレルギー学会秋季学術大会
Place of Presentation
東京
Year and Date
20111100