2011 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫寛容破綻のメカニズムの解析ー拡張抗原提示によるT細胞活性化機構の解明ー
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23791103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 美穂子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (20366363)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫学 / エピトープスプレディング / 自己反応性T細胞 / 抗原特異性 |
Research Abstract |
本研究は自己免疫疾患発症のメカニズムを解明することを目的に、申請者が最近見出した新しいT細胞の活性化様式、拡張抗原提示‘Extended antigen presentation (EAP)’の解析を行っている。拡張抗原提示はこれまで2種類のT細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウスのCD4陽性T細胞(TEaとOT-II)を用いた実験系「拡張抗原提示モデル」で解析を行ってきた。一方を大量の抗原に反応して十分に増殖するResponder、もう一方をごく少量の抗原に反応するAssociatorとし、この2組のT細胞と抗原を抗原提示細胞と共に、抗原量を種々に変化させて培養しFACSにて各々のT細胞の分裂を解析した。 平成23年度はさらにMOG特異的TCRをもつ2D2 T細胞を加え、3種類のTCRトランスジェニックマウスのCD4陽性T細胞を用いた実験系を構築した。Responder、Associator、とは別に特異抗原の存在しないThird partyを設定し、T細胞の分裂を解析した。ResponderやAssociatorが分裂する条件において、特異抗原の存在しないThird partyのT細胞は分裂せず、拡張抗原提示によるT細胞活性化の抗原特異性を証明出来た。また、各々のT細胞の役割を入れ替えて解析を行い、拡張抗原提示が特定の抗原特異的T細胞にのみ観察される現象でないことが証明された。 多様な自己抗原に対する免疫応答の出現は自己免疫疾患の特徴である。拡張抗原提示によるT細胞の活性化はその免疫学的基盤の一つと考えられるエピトープスプレディングの細胞レベルでの現象である可能性が考えられている。拡張抗原提示の抗原特異性と普遍性の証明は、自己免疫疾患の発症や病勢に拡張抗原提示によるT細胞の活性化が関与している可能性を示唆する重要な結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、これまで2種類のT細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウスのCD4陽性T細胞(TEaとOT-II)を用いた実験系であった「拡張抗原提示モデル」に、3種類のTCRトランスジェニックマウスのCD4陽性T細胞を用いた実験系を加えることに成功し、試験管内での拡張抗原提示によるT細胞活性化の抗原特異性と普遍性を確認できた。また、この新たに構築された3種類のTCRトランスジェニックマウスのCD4陽性T細胞を用いた実験系で、制御性T細胞の関与の解析や重要な役割と担う共刺激分子やサイトカインの検索を進めている。実験はおおむね予定通りに進んでおり、経過は順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に新たに構築された3種類のTCRトランスジェニックマウスのCD4陽性T細胞を用いた「拡張抗原提示モデル」の実験系で、制御性T細胞の影響を解析する。具体的には2種類のResponderと1種類のAssociatorを設定し、2種類のResponderのうち一方は制御性T細胞を含まず、もう一方に制御性T細胞を含む細胞集団として解析を行う。この実験系においてAssociatorの増殖は、各抗原の濃度バランスにより様々な結果を呈すると考えられ、どのような抗原濃度条件下で制御性T細胞によるAssociatorへの抑制が優位となる、もしくはAssociatorの活性化が増強するのか、を明らかにする。 拡張抗原提示によるT細胞の活性化を補助および増強する抗原提示細胞上の共刺激分子やサイトカインを検索する。共刺激分子としてはT細胞活性化に関連するB7-1、B7-2、ICOSL、OX40、4-1BBなどを、サイトカインについては特にT細胞の分裂に重要なSTAT5を介してT細胞の活性化に関連するサイトカイン、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、IL-21などを候補に考えている。 生体内で実際に拡張抗原提示によるT細胞の活性化がおこるのか、また拡張抗原提示によって自己免疫疾患が発症するかを検討する。拡張抗原提示によって疾患が惹起されることが示されれば、炎症に伴う自己抗原特異的な免疫寛容の破綻が初めて証明されることになり、その意義は大きいと考えている。拡張抗原提示は自己免疫疾患発症の基盤となる自己反応性T細胞活性化の細胞レベルでの現象と考えられ、自己免疫疾患発症の予測や新しい治療法の開発など臨床応用への展開をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、試験管内外でのT細胞の培養や解析(FACS、リアルタイムPCR、ELISAなど)を計画しており、実験用試薬、ペプチド、実験動物の購入を予定している。共刺激分子を検索するために、共刺激分子の阻害抗体や刺激抗体の購入も予定している。また、研究成果発表のために国内外の学会出張や論文作成を予定しており、その費用も使用する予定である。
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Research Products
(1 results)