2011 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス・肺炎球菌重複感染マウスにおけるマクロライド系抗菌薬の効果
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23791139
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森田 十和子 (永田 十和子) 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究員 (50569960)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 肺炎球菌 / 重複感染 / マクロライド系抗菌薬 / サイトカイン / PAFレセプター |
Research Abstract |
【(1) インフルエンザウイルス・肺炎球菌重複感染マウスモデル作成】SPF雄性6週齢CBA/Jマウスにインフルエンザウイルス(A/PR8/34)を経鼻感染させ、その4日(96時間)後に肺炎球菌を経鼻感染させ、インフルエンザウイルス・肺炎球菌重複感染マウスモデル(以下、重複感染マウスモデル)を作成した。今年度はインフルエンザウイルス(A/PR8/34)とペニシリン感受性肺炎球菌の重複感染マウスモデルを完成し、単独感染群より生存率が低下することを確認した。【(2) 重複感染マウスモデルにおけるMCLsの効果検討】インフルエンザウイルス感染1週間前より、マクロライド系抗菌薬であるクラリスロマイシン(CAM)の投与を開始し、肺炎球菌感染24時間前(肺炎球菌への直接的な抗菌作用は関与しない)までの計10日間投与し、CAM投与群と非投与群とを比較検討した。[(2)-1]生存率及び体重減少率:同感染モデルをCAM投与群と非投与群に分け、生存率及び体重減少率を検討したところ、CAM投与群で生存率が高く、体重減少率も有意に改善した。[(2)-2]インフルエンザ感染6日後(肺炎球菌感染2日後)の病理および気管支肺胞洗浄液の解析:インフルエンザウイルス感染6日後(肺炎球菌感染2日後)に重複感染マウスを屠殺し、肺組織をHE染色し、肺炎の重症度を評価した。また、肺炎球菌接着因子として報告されているPAFレセプターはインフエンザ感染後に増加し、免疫組織化学染色による肺組織のPAFレセプターの発現に関しても、その分布とMCLsの効果についても検討した。HE染色では、重複感染群において高度の炎症細胞浸潤が認められたが、MCLsの効果はHE染色上は有意ではなかった。しかし、PAFレセプターの発現に関しては、重複感染モデルにおいて、CAM投与群は同発現が低下していたことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)インフルエンザウイルス・肺炎球菌の重複感染マウスモデルの作成と、同モデルにおけるMCLsの生存率、体重減少率改善効果を確認できた。そのMCLsが有する重症化抑制作用機序に関して、肺組織におけるHE染色およびPAFレセプターの免疫組織化学染色を行い、肺炎球菌接着因子であるPAFレセプターへのMCLsの効果について注目し、次年度はさらに詳細な検討を行う予定としている。当初の計画に沿って、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策)平成23年度の検討結果から、インフルエンザウイルスおよび肺炎球菌の重複感染マウスモデルにおいて、MCLsの重症抑制効果が示唆された。また、PAFレセプターに対するMCLsの効果は、MCLsの重症抑制効果のひとつの機序としてさらなる検討が必要であり、インフルエンザウイルス感染後の経時的な評価などを追加検討していく予定である。さらに、MCLsの抗炎症作用に着目し、ホモジネート肺におけるサイトカインやケモカインについてELISA法やLuminex法を用いて検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(次年度の研究費の使用計画)次年度は、免疫組織化学染色による検討に加え、ホモジネート肺におけるサイトカインやケモカインをELISA法やLuminex法を用いて検討する予定としており、その抗体等の購入が必要になると考えている。また、ペニシリン耐性肺炎球菌やマクロライド耐性肺炎球菌、他のMCLsとして15員環系であるアジスロマイシン(AZM)での検討も考えており、マウス購入も行う予定である。
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