2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクター・ピロリ菌の病原遺伝子判定キットの開発
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23791141
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
綿田 雅秀 大分大学, 医学部, 医員 (30583778)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ |
Research Abstract |
平成23年度研究成果の一つとして、ピロリ菌でもっとも研究されている病原遺伝子であるcagAと関連した遺伝子群の調査を行い、その結果JHP0045とJHP0046という二つの有用な遺伝子を見つけ、論文発表を行うことが出来た(Masahide Watada et al, BMC Gastroenterology 2011; 11: 141)。 また当グループで行っている研究より、日本のピロリ菌株において病原性が疑われる遺伝子を6つ拾い上げ、日本の菌株100株を用いて調べたが、今年度の調査では有意な遺伝子を発見出来なかった。病原性が疑われる遺伝子は他にも多数拾い上げることが出来ているため、今後引き続き検討を続けていく予定である。 また菌株間に遺伝子の多様性が認められるいわゆるplasticity region(不安定領域)にある遺伝子もcagAが存在する領域と同様に病原性に関わるとの報告が多いため、現在日本の菌株を用いて病原性と関連する遺伝子を調べている。病原性が疑われる遺伝子のいくつかはシーケンスまで行い、詳細な検討を行っている途中である。 また他に、今回の実験経過から判明したことであるが、通常の方法でのドットブロット法ではメンブレンの連続使用が可能であったが、今回の研究における方法では連続してメンブレンを使用すると感度が低下することが判明した。実験方法の改良および一度に判断できる病原遺伝子数の追加が必要と判断された。胃癌の原因としては、菌側の因子のみならず、宿主因子も重要であることが多数報告されているが、病原遺伝子数を追加する手段として、宿主因子の調査も行うこととした。胃癌のリスクが高いと思われる検体と低いと思われる検体を比較したRNA microarray にて多くの病原性が疑われる遺伝子を挙げることが出来た。今後も引き続き詳細な検討を続けていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において有用な遺伝子を発見することが出来、論文として発表を行えた(Masahide Watada et al, BMC Gastroenterology 2011; 11: 141)。この遺伝子はJHP0045とJHP0046という遺伝子であり、胃癌株において陽性率が高いことが示唆されている。これらの遺伝子は日本株においては陽性率が低かったため、今年度の研究では十分な症例数を検討できておらず有意差を認めなかったため、今後症例を増やし検討を続けていく必要があり、今年度も引き続きの実験を予定している。 また我々のグループにおいては、他にも有用な菌側の遺伝子を検索および遺伝子配列による詳細な分析を実行中であり、そこから得られたいくつかの遺伝子は今年度調べることが出来た。今回使用する病原遺伝子に適当な病原因子は今のところ見つかっていないが、今後の研究で発見出来きれば追加していく予定である。 実験を行っている段階において、今回試みているドットブロット法では、メンブレンの連続使用が難しいことが判明し、その欠点を補う必要が生じた。胃発癌においては菌側の因子のみならず、宿主因子も大事な要素ではあるため、欠点を補うために一度に多数の病原因子を判定できるようヒト検体におけるRNA microarray を行い、これまで報告されている遺伝子以外にも候補となる遺伝子を多数拾い上げることが出来た。そのため今後宿主因子も同時に検索し、両方の因子を同時に多数測定可能となることが期待される。 以上の経過から研究状況は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在見つけることが出来ている菌側の病原遺伝子の数を更に増やしていく。病原遺伝子の検索の方法としては公表されている日本の菌株や我々のデータから、日本の菌株において、その病原性が疑われる遺伝子を選択し、さらに多くのサンプルを用いてそれぞれの評価を行う予定である。また我々のグループが詳細な検討を続けている他の病原遺伝子に関しても、当研究に組み込むことが出来るものを検証していく。 また同様に宿主側の遺伝子に関しても検討を続け、宿主因子に関しても同時に検索できるようなシステムの構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き日本において病原因子となるような遺伝子の検索のため、PCRやシーケンスに必要となる物品等購入する。またヒト遺伝子を利用するにあたり、現在病原性を疑う遺伝子に関してRT-PCR等による定量的検査や免疫染色による詳細な検討を行う予定であるため、そのための物品も随時購入する。 システム構築のため現在使用しているキットよりさらに精度を高めるためのキットを検索していく。現在の方法では連続してメンブレンを使用すると感度が低下するため、改善できるキットがあれば必要に応じて購入し、より精度の高いものを目指す。 また成果を発表するための雑誌への投稿や、情報収集および成果発表を目的とした学会参加費用にも使用する予定である。
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