2011 Fiscal Year Research-status Report
相同組換えによる安全な遺伝子修復法のアデノシンデアミナーゼ欠損症への適用
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23791147
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内山 徹 東北大学, 大学病院, 助教 (10436107)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ADA欠損症 / iPS細胞 / 相同組換え |
Research Abstract |
先天性免疫不全症における造血幹細胞を対象とした遺伝子治療は、免疫系の再構築という満足すべき結果が得られたが、同時にレトロウイルスベクターの挿入変異による発癌という大きな問題が発生した。本研究では相同組換えにより変異遺伝子を直接野生型に置き換え修復するという最も安全な遺伝子治療法の確立を目指す。ADA欠損症は重症複合免疫不全症(SCID)の一つであり、ADA遺伝子の変異により引き起こされる。ADA患者から樹立した皮膚線維芽細胞(fibroblast)は20染色体上のADA遺伝子のExon7にpoint mutationがホモで存在していおり、この細胞はin vitroでの継代が可能である。また、このFibroblastは正常人由来のものに比べADA活性の低下が確認された。レトロウイルスベクターによりcMyc、Oct3/4、Sox2、Klf4の各遺伝子を導入し、その後マウス胎児線維芽細胞(MEF)上にて培養しiPS細胞を樹立した。iPS細胞は多能性マーカー(Nanog、Oct3/4、SSEA-3、SSEA-4、TRA1-60、TRA1-81)を発現していた。また、iPS細胞においても、正常人およびADA患者間でADA活性の差が確認された。さらに相同組換えに使用するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)の製作を行った。正常人のゲノムDNAから、ADA遺伝子のExon7の両端に1-1.5kbの相同配列(ホモロジーアーム)を含む配列をPCRにて増幅し、AAVベクターに組み込んだ。293T細胞へ、ヘルパープラスミド(AAV-rep/capとAd-Helper)とともにトランスフェクションすることで、相同組換えに使用するベクターを産生した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
iPS細胞の樹立に使用する、各ウイルスベクターやフィーダー細胞として使用するマウス胎児線維芽細胞(MEF)は、以前iPS細胞を樹立した際に使用したものをそのまま使用する予定であった。しかし、平成23年3月11日の東日本大震災にて、ウイルスベクタープラスミドやMEF細胞が全て失われてしまい、全て最初から準備すること必要がでてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したiPS細胞に、targeting vectorによる遺伝子導入を行い、相同組換えによる変異の修復を行う。遺伝子導入後にデオキシアデノシン処理により、遺伝子修復クローンのみ選択し、シークエンス反応にて変異の修復を確認する。in vitroにおいてADA活性を確認後にOP-9ストローマ細胞上にてサイトカイン (BMP4,VEGF, SCF, FGF, TPO, Flt ligand)存在下で培養することにより、CD34陽性細胞へ分化誘導させる。In vitroにて各血球系に分化させ、各血球におけるADA活性を測定する。iPS由来CD34陽性細胞の分化能を、ヒト造血幹細胞が高率に生着できるNOG(NOD-scid/gamma chain null)マウスを用いて検討する。マウス胎生10.5日目のaorta-gonad-mesonephros: AGM領域由来の細胞株:AM20.1B4と、泌尿生殖器由来の細胞株:UG26.1B6を用いて造血幹細胞へ分化誘導し、その後NOGマウスの骨髄腔に直接注入する。移植3-5ヶ月後のマウスの末梢血にてヒトリンパ球の発生およびADA活性を評価し、遺伝子修復法による遺伝子治療の効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、iPS細胞の培養、造血幹細胞への分化誘導の際の試薬、およびNOG-SCIDマウスの購入および飼育費に使用する予定である。
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