2012 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚形成におけるCa2+制御とc-Ablによる分裂軸の配向制御
Project/Area Number |
23791265
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 繁 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (60523511)
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Keywords | 細胞分裂軸 / 皮膚基底細胞 / ABL1 |
Research Abstract |
皮膚組織は、真皮層と表皮から成る。表皮は増殖する基底細胞とその増殖により供給される上層の分化細胞から成る。基底細胞の分裂方向は基底膜に対して平行または垂直に制御されていることが報告されている。平行分裂は皮膚の2次元拡張に寄与し、垂直分裂は分化細胞の多層化に寄与する。我々は今回ヒト培養細胞であるHeLa細胞を用いて、分裂軸制御因子をヒトの全キナーゼに対して網羅的に探索し、ABL1チロシンキナーゼが新規分裂軸制御因子であることを見出した。ABL1は進化的に保存された分裂軸制御因子LGN,NuMAの細胞内局在を制御することで、HeLa細胞においてもマウス皮膚基底細胞においても分裂軸を制御していること、その際ABL1によるNuMAのリン酸化が特に重要であることを見出した。これらの成果はNat. Commun. 3: 626. doi:10.1038/ncomms1634.により報告した。一方で、皮膚の分化にはCa2+の濃度が重要である。HeLa細胞において、分裂軸制御にCa2+が関与する可能性について検証を行った。CaMK2阻害剤であるKN-93やCa2+イオノフォアを用いて、細胞内Ca2+シグナルの阻害を行ったが、分裂軸の異常は観察されず、LGNの局在変化も有意な差は認められなかった。HeLa細胞において、ABL1欠損による分裂軸の異常はLGNをさらに欠損させることで分裂軸を正常に戻すことができた。そこで、ABL1/LGNのダブルノックアウトマウス(KOマウス)の作出を試みた。しかし、胎生の早期に致死となるのか、ダブルKO個体を得ることはできなかった。そこで、皮膚器官培養法においてshRNAレンチウイルスによる遺伝子発現抑制の系の立ち上げを試みたが、効率的なウイルス感染を行うことができなかった。今後はKOマウスではない皮膚での遺伝子発現抑制の方法を模索する予定である。
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