2011 Fiscal Year Research-status Report
脳と脊髄の拡散テンソルを用いた神経難病の早期診断、治療効果判定の指標の開発
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23791380
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
THA K.K. 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20451445)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 拡散テンソル / 神経難病 / 頚髄 / 脳 / MRI |
Research Abstract |
神経難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症(SCD)、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎及びその類似疾患(いわゆるNMO spectrum disorders)を含む」による社会経済的な負担の軽減、患者のquality of life (QOL)の向上には、これら疾患の早期診断、治療効果や予後の早期予測が重要である。これら疾患の早期診断、治療効果・予後の早期予測のための適切な非侵襲性指標はない。本研究は、脳と脊髄の拡散テンソル(拡散テンソルはMRI撮像法の一つである)による神経難病の評価(早期診断、治療効果・予後の早期予測)のための非侵襲性指標の開発を目的とした。拡散テンソル(DTI)の変化は微細であり、患者さんのデータのみから異常を指摘することは難しい。DTIの評価には、健常人データとの統計学的な比較が必要とされる。また、DTIのパラメータは年齢、性別、解剖学的部位によって異なるため、DTIの評価には同年代・性別の健常人データとの比較が必要である。当院では、43名の健常人のDTIデータを取得してあるが、年代によっては、正常DTIデータが不足していた。そのため、平成23年度では、不足していた健常人のDTIデータ「全81例;年齢=20~60歳代」を収集し、正常人の脳と頚髄の3T装置でのDTIデータベースを作成した。また、当院自主臨床研究審査委員会の承認「認定番号は11-0077」を得て、北海道大学病院神経内科に受診した神経難病(対象疾患は、ALS、SCD、MS、NMO spectrum disorders)またはその疑いの患者のDTI撮像を開始した。現時点では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)2例の1回目の撮像を修了している。臨床情報は、研究協力者の矢部一郎准教授(当院神経内科)の協力を得て、取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、脳と脊髄の拡散テンソルによる神経難病の評価(早期診断、治療効果・予後の早期予測)のための非侵襲性指標の開発を目的としている。平成23年度の研究計画は、(1)症例収集、(2)臨床所見の収集、(3)MRI撮像である。研究計画に従い、当院自主臨床研究審査委員会の承認「認定番号は11-0077」を得て、本研究への協力が得られた神経難病患者のDTI撮像を開始した。臨床所見は研究協力者の矢部一郎准教授(当院神経内科)の協力を得て、取得している。また、患者のDTIデータとの比較のための健常人のDTIデータの収集も行った。健常人のDTIデータは目標数に到達している。よって、当初の計画に従い順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)症例収集:目標数に達するまで、対象患者を、引き続き、収集する。本研究への協力について、患者または家族(患者自身が同意を得るこのできない場合)から同意を得る。(2)臨床所見の収集:必要な臨床データを収集する。必要に応じて、臨床データの解釈などについて、研究協力者の矢部准教授と打ち合わせを行う。(3)MRI撮像:引き続き、MRI撮像を行う。通常のMRI画像の異常所見の有無を、研究協力者の寺江聡准教授に評価してもらう。(4) データ解析:患者症例が集まった段階で、患者群と健常群の脳・頚髄のDTIパラメータの違いについて、統計学的検討を行う。患者群において、治療反応の良好群と不良群との間の治療開始時のDTIパラメータの違いやDTIパラメータの経時的変化の違いを検討する。異なる治療群間のDTIパラメータの変化についても検討する。また、治療開始前や経過中のDTIパラメータと治療効果、予後との相関を調べる。必要に応じて、統計解析法について、統計科学専門家に助言を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、画像データを保管するためのバックアップや画像データの転送のためのCD-Rやフラッシュメモリー、外付けハードディスクの購入、解剖学的部位の正確な同定や神経変性性疾患及び炎症性疾患、免疫性神経性疾患の病態を理解するために必要な図書の購入、国内外での情報収集・研究打ち合せ、成果発表のための経費、論文投稿のための校正・投稿料などに、研究費の使用を計画している。平成23年度は、MRI検査費用及び臨床研究の損害保険の費用が発生していなかったため、使用残額が生じた。残額は、平成24年度の研究において、情報収集・研究打ち合わせ、成果発表のための経費や画像データ保存に必要な物品数を増やすなど、有効活用する予定である。
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