2011 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍内HIF‐1存在低酸素領域の特異的描出を目的とした低分子放射性プローブの開発
Project/Area Number |
23791412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 真史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40381967)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射性医薬品 / 分子イメージング / がん / 低酸素 / HIF-1 |
Research Abstract |
本応募課題では、腫瘍の悪性度や治療抵抗性と密接に関係する腫瘍内低酸素領域(低酸素誘導因子[Hypoxia-inducible factor-1; HIF-1]存在領域)を体外から非侵襲的に検出するための放射性分子プローブ開発を目的とする。具体的には、HIF-1のαサブユニットの酸素依存的分解メカニズムに基づき、低酸素領域でのみ安定化され、それ以外の組織では分解されるペプチドプローブを開発することで、HIF-1存在低酸素領域への選択的プローブ送達と非標的臓器や血中からの速やかな放射能クリアランスの達成を目指す。 HIF-1αの酸素依存的分解に必須のプロリン残基を含むペプチドプローブOP30、およびそれに細胞膜透過配列を導入したKOP30、プロリン残基をアラニン置換したmKOPを設計・合成し、放射性ヨウ素標識を行った。得られたプローブを細胞溶解液とインキュベートしたところ、OP30とKOP30では90%以上が分解されたが、mKOPでは80%以上が未変化体として残存した。低酸素・通常酸素条件下で細胞取り込み実験を行ったところ、OP30ではいずれの条件下でも取り込みが認められなかったが、KOP30は通常酸素細胞と比較して低酸素細胞に4倍高い取り込みを認めた。担がんマウスでの体内分布実験の結果、腫瘍血液比は1を下回ったものの、KOP30の腫瘍集積はルシフェラーゼ発光で評価したHIF-1転写活性と有意な正の相関を示し、その腫瘍内局在はHIF-1α存在領域との一致を認めた。 以上の結果から、KOP30が腫瘍内HIF-1存在低酸素領域イメージングプローブに必要な基礎的性質を有する事を見出した。次年度の課題として、腫瘍血液比を向上させる修飾をプローブに加えるなど、高コントラストに腫瘍内HIF-1存在低酸素領域をイメージングするべくプローブの最適化を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、当該年度は見出したプローブの正常マウスにおける体内動態検討までを行う予定であったが、実際には担がんマウスにおける体内動態検討、腫瘍集積とHIF-1転写活性との比較、腫瘍内局在とHIF-1発現との比較など、次年度に予定していた検討項目まで終えることができたので、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に開発したプローブKOP30の改善すべき点として、腫瘍血液比の低さが挙げられることから、次年度はそれを高め、高コントラストに腫瘍内HIF-1存在低酸素領域をイメージング可能なプローブ開発・最適化を行う。KOP30の腫瘍集積はHIF-1転写活性と相関し、腫瘍内局在はHIF-1発現部位と対応が認められたことから、HIF-1と同様のメカニズムで分解を受ける基礎的性質は有していると考えられる。そのため、分解に関与するプロリンおよびその周辺残基は保持しつつ、分解には直接関係しない細胞膜透過配列部分に変更を加えることで、プローブの体内動態改善を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、多数のプローブ候補ペプチドを合成してインビトロ・インビボ検討で絞り込みを行う予定であったが、早期の段階でKOP30を見出すことができたため、その評価検討に注力した結果、合成用試薬購入用に確保していた研究費が次年度使用分となった。次年度はプローブの最適化のために、細胞膜透過配列部分に変更を加えたプローブを多数合成し、評価する必要があるので、予定通り合成試薬の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)