2011 Fiscal Year Research-status Report
悪性神経膠腫におけるIDH遺伝子異常の生物学的意義の解明
Project/Area Number |
23791614
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
田中 雅樹 杏林大学, 医学部, 助教 (80531491)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 神経膠腫 / IDH1 / 遺伝子異常 / 治療感受性 / 造腫瘍性 |
Research Abstract |
当科で所有しているヒト神経膠腫細胞株におけるIDH1遺伝子変異の有無につき、IDH1遺伝子の点変異hot spotであるcodon 132をdirect sequencingにより検討した。その結果、12種類全ての細胞株でIDH1遺伝子codon 132は野生型であった。これは、殆どの細胞株がprimary GBM由来であることであり、primary GBMではIDH1 mutationが極めて稀であることに合致する所見と考えられた。当科での2000年以降の神経膠腫症例で遺伝子解析の可能な腫瘍標本が保管されている365検体を用いて、IDH1 mutationの有無、MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化の有無について遺伝子解析を行った。全体でMGMT解析は242例で可能で、メチル化118例、非メチル化124例であった。IDH1変異は183例で施行され野生型が151例、変異型が32例であった。組織型別では、膠芽腫ではMGMTメチル化66例、非メチル化87例、IDH1は野生型116例、変異型8例であった。IDH1変異型は7/8でMGMTメチル化であり、有意に相関がみられた(p<0.001)。退形成性星細胞腫ではMGMTメチル化12例、非メチル化16例、IDH1野生型14例、変異型1例のみであった。この変異型はMGMTメチル化陽性であった。乏突起膠腫系50例ではMGMTメチル化が32例、非メチル化8例、IDH1野生型10例、変異型19例で、IDH1変異とMGMTメチル化の相関が示唆されたが、悪性度による相違はみられなかった。星細胞腫47例では、MGMTメチル化7例、非メチル化7例、IDH1野生型8例、変異型4例、IDH1とMGMTに相関は認められなかった。組織型、悪性度によりこれらの頻度と関連性に違いがあり、その意義を更に検討することが今後の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当科で保管している約10年間の神経膠腫腫瘍標本を用いたIDH1関連遺伝子解析を進めることができた。IDH1変異を神経膠腫細胞株に導入することによる変異IDH1を発現するsublineの樹立は複数の細胞株に対して進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
変異IDH1発現細胞株の樹立を早期に進める。樹立が困難な場合は、発現vectorを再度新規に作成する、或いは他研究室から供与を受けていくことも念頭に入れて進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.神経膠腫各組織別に,化学療法(あるいは放射線・化学療法の)後の治療効果と生存期間について検索し,IDH1, 2変異との相関性の有無をlogrank testにより解析する.2.IDH1, 2以外の臨床的,病理学的予後因子を含め,IDH1, 2の遺伝子異常の存在が,独立した予後因子であるか否か,統計学的に解析する.3.変異型IDH1遺伝子の導入がされた細胞株が樹立した後、その生物学的意義を検証する。抗癌剤治療(temozolomideなど)や細胞死を誘導するTRAIL,あるいはTRAIL受容体特異的モノクローナル抗体,その他EGFR阻害剤(AG1478),mTOR阻害剤 (Rapamycin)などの分子標的治療薬などによる治療を行い,その感受性に野生型IDH1, 2を示す親株細胞との差の有無につきMTTアッセイなどを用いて比較検討する。4.感受性の変化が認められるIDH変異が確認されれば,変異型IDH1, 2の発現に伴う細胞内シグナル経路上の変化や遺伝子発現プロファイルの変化の有無について,親株と変異株のそれぞれにおいて蛋白抽出,mRNA抽出を行い,Western blotやRT-PCR, あるいはmicroarrayを用いた解析を検討し,治療感受性に及ぼす下流の因子解析を行う.5.更に,変異型IDH1, 2の導入細胞をヌードマウスの皮下あるいは脳内に移植し,形成された移植腫瘍に対し,抗癌剤・分子標的治療薬による治療を行い,in vivoにおいても実際に治療効果に影響が出現するか否か,親株による移植腫瘍と比較検証する.また,その結果を腫瘍の病理検索も交え検討する。
|
Research Products
(8 results)