2012 Fiscal Year Research-status Report
骨肉腫の新たな病態解明を目指したがん幹細胞の同定とその特性の解析
Project/Area Number |
23791629
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
武内 章彦 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (70512218)
|
Keywords | 骨肉腫 / 幹細胞 / 糖化蛋白受容体 |
Research Abstract |
1.骨肉腫手術標本の幹細胞マーカー、RAGE(後期糖化産物受容体)発現の解析:骨肉腫の手術標本を、抗RAGE抗体、抗CD133抗体で蛍光免疫染色を行った。その結果、RAGEとCD133のシグナルは一致し、転移のある症例は転移のない症例よりも有意にRAGE/CD133の高発現群が多く、また、初発よりも再発の病巣は、高発現群が有意に高かった。さらに、転移のない症例では、RAGE/CD133の低発現群は高発現群よりも有意に生存率が高く、RAGE/CD133の発現が予後予測因子として有用である可能性が示唆された。 2.RAGE遺伝子導入骨肉腫細胞株(HOS,MG63,SaOS2)のSOX2、OCT-3/4、Nanogの発現の解析:RAGE遺伝子導入骨肉種細胞株のRAGE陽性細胞とコントロール細胞からRNAを抽出し、real-time PCRで解析し、Saos2細胞では、コントロールと比べ、RAGE陽性細胞では、SOX2, OCT-3/4, Nanogの発現が高い傾向にあった。 3.RAGE高発現細胞の樹立:RAGE遺伝子導入細胞から、RAGE高発現細胞を樹立するために、ヒト骨肉種細胞株(HOS)にRAGE遺伝子導入後、limited dilution法により高発現株を樹立。 4.RAGE高発現株のマーカーの発現の解析:フローサイトメトリーにてCD133とCD24の発現を解析すると、コントロール細胞よりもCD133、CD24ともに有意に発現が高く、RAGE遺伝子の発によりこれらの発現が誘導された可能性が示唆された。 5.RAGE発現細胞を標的とした治療法確立の可能性:RAGE安定発現株である線維肉腫細胞(RAGE遺伝子導入HT1080)に対して、低分子ヘパリンを添加することで、抗腫瘍効果を示しさらにRAGEの下流シグナル(Cdc42, Rac1, NFκB)が抑制されることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト骨肉腫細胞株に一過性にRAGE遺伝子を導入することにより、がん幹細胞様の性質を有することを見いだしていたが、RAGE発現が安定せず以後の解析に難渋していた。そこで、RAGE高発現安定株の樹立を行い、幹細胞マーカー(CD133、24)も発現誘導されることを確認した。また、手術切除標本におけるRAGE,CD133の発現は、臨床経過と有意に相関していることが明らかとなった。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、手術切除標本中のCD24の発現を免疫染色で検討し、臨床成績との相関を解析する。さらにRAGE, CD133の解析についても症例数を増やす予定である。また、新たに樹立したRAGE安定高発現骨肉腫細胞(HOS)株を用いて網羅的遺伝子発現解析アレイで解析行い、CD133、CD24が誘導されるメカニズムを追究する。加えて、ヌードマウス移植により、in vivoにおけるがん幹細胞様の性質の有無を検討する。すなわち、RAGE発現の有無による腫瘍塊形成能を比較する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に研究費を適正に使用したが、40円の未使用額が生じたため、平成25年度に繰り越した。平成25年度は、骨肉腫細胞株の培養(幹細胞用培養液も含む)のための培養液・シャーレなどに10万とした。遺伝子解析発現解析用のGenechip human Gene 1.0 ST Array (Affymetrix社)は試薬も含めて30万とした。実験用動物・飼育費:使用マウスは40匹を最低使用するため、飼育期間が1カ月より10万と概算した。さらに情報収集・成果発表のため、国内(東京:年1回)・国際学会(アメリカ:年1回)およびポスター代を計上した。
|
Research Products
(11 results)