2011 Fiscal Year Research-status Report
骨軟部腫瘍切除後欠損に対する脂肪由来幹細胞による組織再生と蛍光イメージング評価
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23791630
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 克洋 金沢大学, 大学病院, 助教 (80507054)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 骨再生 |
Research Abstract |
今回、動物モデルの骨軟部組織の欠損に対し、自己脂肪由来幹細胞を用いた細胞移植療法を行い、有効性とその作用機序を検証することを目的とし実験を行った。 ラットを用いた大腿骨骨欠損モデルを用いて脂肪由来幹細胞の採取、移植を行い、組織再生を検証した。大腿骨に創外固定を装着し、骨欠損を作成した。鼠径部の脂肪組織を2g採取し、組織破砕、コラゲナーゼ処置、フィルター、遠心分離を行うことで、幹細胞を含む間質細胞を得ることができた。これをコラーゲンゲルと骨欠損部に移植した。移植後3週で、コントロール群と比較し、脂肪幹細胞移植群の骨形成は組織学的に旺盛であることが確認された。コントロール群では線維性の連続が主体であったが、移植群では骨形成が見られた。脂肪幹細胞移植が骨形成に有意義であることが示された。移植した幹細胞を追跡するため、蛍光標識のPKHを使用した。細胞のラベリングが可能であり、動物に標識した細胞を移植した。しかし、組織評価では標識の確認が困難であった。標識率、切片の作成、脱灰操作などに問題があると考えられ、今後GFPを使用した方法なども含め検討の余地があった。 骨再生の実験として、壊死骨の再生研究も行った。マウスから頭蓋骨を摘出した後、液体窒素で凍結処理し、骨を壊死させた。これを生体内で骨再生を促すため、まずin vitroの実験を行った。凍結した骨を培養液にいれ、その上に脂肪幹細胞を培養した。1週間後に摘出し、組織学的に骨表面に細胞が生着することが確認された。更に培養期間を長くすることで、壊死骨に対する幹細胞の影響を検討し、in vivoでも実験をおこなっていく方向である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪由来幹細胞を用いた骨軟部組織欠損の組織再生ということで、骨、皮下組織、脂肪、筋肉などが対象となるが、今回、骨の再生を促す実験で、良好な結果がでている。ラットでの骨欠損モデルが創外固定を使用することで確立された。脂肪幹細胞を移植することで組織学的に骨形成が促進されることが確認された。これにより、本実験が有意義な方向ですすめられることは確証された。今後PKHあるいはGFP標識による、移植細胞の運命や、成長因子の測定などを予定している。 また、脂肪幹細胞移植が骨再生に有効ということがわかったので、壊死骨の再生にも取り組んだ。臨床での骨腫瘍の手術は、摘出した腫瘍骨を再利用することが行われている。再利用の際に、液体窒素で腫瘍細胞を不活化するが、その際に、骨細胞も死滅するため、一旦骨は壊死となる。この壊死骨を再生させるためには、通常年単位の月日が必要とされるが、幹細胞治療によりこれが促進される可能性がある。In vitroの実験でまず壊死骨と脂肪幹細胞の反応を確認した。第一段階として細胞が壊死骨に生着することが確認されたので、今後その細胞が骨再生に影響するかを検討していく方向である。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪由来幹細胞の骨軟部組織での有用性をしめしていく。ラットを用いた大腿骨骨欠損モデル、マウスでの頭蓋骨壊死モデルに対し、脂肪幹細胞移植治療を行い組織再生を検証する。次に幹細胞の採取をGFP動物で行い、移植される方は正常動物を用いることで、蛍光標識された幹細胞を観察する。移植後から経時的にin vivoイメージングを行うことで、細胞の動態を直接観察することができる。移植した細胞がどれくらいの割合で生着し、分化するかを確認し、脂肪由来幹細胞の分化能力を検証する。更に、分化する以外の作用として、移植部位の組織からVEGFやHGFなどの成長因子の測定を行い、分化作用以外のメカニズムも明らかにし、脂肪由来幹細胞移植の意義を明確にする。これらの結果から、どのような疾患に、どれくらいの量をどのタイミングで何回移植するのがよいのか明らかにする。骨再生以外にも、骨軟部腫瘍疾患で再生が必要とされる、筋肉、神経などに関しても応用を広げる。 本研究の最終的な目的は、脂肪由来幹細胞などの体性幹細胞の治療の有効性と限界をみきわめることと、ヒトへの応用である。分化能力の限界と、成長因子放出などのソースとしての役割をはっきりさせることは、否定的な研究ではなく、より安全かつ有効な細胞移植治療法へと導くことができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脂肪幹細胞の採取及び移植に必要な動物の購入。細胞の培養、分化誘導に必要な培養液やプラスチック製材の購入。病理切片作成、免疫組織化学染色、H-E染色、VEGF, HGF, PDGF, FGFなどの各種サイトカインの測定などの試薬の購入。日本再生医療学会、アメリカ整形外科学会の学会参加費、論文の校正及び投稿費に使用予定である。
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[Presentation] Comparison of Sarcoma Cell Seeding, Viability and Deformation in the Lung, Muscle and Liver, Visualized by Subcellular Real-Time Imaging in the Live Mouse2011
Author(s)
Hayashi K, Tsuchiya H, Yamamoto N, Shirai T, Nishida H, Tanzawa Y, Takeuchi A, Kimura H, Miwa S, Igarashi K, Hoffman RM
Organizer
International Society of Limb Salvage/Musculoskeletal Tumor Society Combined Meeting
Place of Presentation
China National Convention Center (China)
Year and Date
2011-09-17