2012 Fiscal Year Research-status Report
骨軟部腫瘍切除後欠損に対する脂肪由来幹細胞による組織再生と蛍光イメージング評価
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23791630
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 克洋 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80507054)
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Keywords | 幹細胞 |
Research Abstract |
骨軟部組織の欠損に対し、自己脂肪由来幹細胞を用いた細胞移植、再生療法を行い、有効性とその作用機序を検証することを目的とし実験を行った。今年度は脂肪細胞からの分化誘導に関するin vitroの実験、ヒト検体を用いた臨床試験を中心に行った。倫理審査委員会の承認を得て、正常脂肪、脂肪由来腫瘍をヒトから採取し、培養した。分化に関与する遺伝子の模索のため、MDM2が高発現する脂肪肉腫細胞も使用し、比較検討した。脂肪幹細胞を均一な集団として得るため、成熟脂肪細胞を天井培養することにより脱分化させ、間葉系細胞へ再分化させた。正常脂肪組織、高分化型脂肪肉腫のいずれからも初代培養において、段階的な形態変化を伴って紡錘形の線維芽細胞様の細胞が精製・培養された。すなわち、単胞性の脂肪滴を含んだ成熟脂肪細胞が、次第に細胞質を伸ばし、脂肪滴が小さく多数になり、脂肪滴が減少するとともに細胞核が中心に移動して、最終的には線維芽細胞様の細胞となり、活発な増殖活性を示した。次にそれぞれの増殖能と分化能を比較することで、腫瘍の遺伝子異常が細胞の分化に対してもつ影響を調べた。各種細胞をMesenchymal Adipogenesis Kit (Millipore, Cat. SCR020)を使用して脂肪分化誘導を行った。脂肪分化誘導後24日目にOil red O染色を行った。いずれからもOil red Oに染まる多数の脂肪滴を含んだ脂肪細胞が多数、分化誘導された。正常脂肪由来の細胞と脂肪肉腫由来の細胞の脂肪への分化能を、脂肪分化誘導後にOil red O染色し、色素の溶出液を比色定量することで比較した。得られた吸光度のデータをStudent'st検定で比較した。0.24vs0.28 (p<0.01)で有意差をもって肉腫群の吸光度が高く、分化傾向の強いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織中に間葉系細胞への分化能を有する間葉系幹細胞が見出され、再生医療の観点から注目を集めている。しかし、多くの細胞が混在した脂肪組織中から性質の均一な間葉系幹細胞を高純度で分離収集するのは難しい。一方、成熟脂肪細胞を天井培養することにより脱分化させ、他の間葉系細胞へ再分化できることが報告されている。遠心分離により、脂肪滴を含む細胞は上層に分離され、分離された細胞から天井培養により脱分化して得られる細胞は性質の均一な間葉系幹細胞である。また、脂肪系腫瘍の異常遺伝子型として種々のものが報告されており、診断にも応用されている。中でも高分化型脂肪肉腫等にみられる MDM2遺伝子の増幅は、p53 遺伝子の機能を抑制する働きがある。MDM2 遺伝子の増幅をもつ脂肪系腫瘍細胞においては、正常脂肪細胞に比べ、他の間葉系細胞へ再分化させやすいと推測される。腫瘍組織に存在するがん幹細胞に対する分化誘導療法は、未だ治療が困難な腫瘍性疾患に対して期待される治療法である。脂肪幹細胞を用いた骨軟部組織欠損の組織再生ということで、骨、皮下組織、脂肪、筋肉などが対象となるが、今回、脂肪細胞および脂肪肉腫細胞からの天井培養で均一な幹細胞の採取に成功し、分化能の違いも示すことができた。分化能の違いを今後MDM2やp53機能の確認により、更にあきらかにしていく方向であり、実験のながれは概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪由来幹細胞の骨軟部組織での有用性を示していく。今回、脂肪細胞および脂肪肉腫細胞からの天井培養で均一な幹細胞の採取に成功し、分化能の違いも示すことができた。高分化型脂肪肉腫からの培養細胞で特に旺盛な再分化能を認め、その機序としてMDM2遺伝子の高発現によるp53転写抑制を介したpparγ遺伝子発現の増加が考えられる。MDM2遺伝子の増幅した腫瘍だけでなく、p53機能低下が要因で発生した腫瘍、すなわち分子標的治療が難しい遺伝子型の不均一な腫瘍全てにおいて、p53機能低下を逆手に取った分化誘導療法の可能性を示す研究の可能性もひめている。p53機能低下はヒト悪性腫瘍全体の約50%以上に認められるため、非常に有望な治療につながると考えられる。分化誘導の前後でp53およびMDM2蛋白をWestern blotを用いて定量し比較することなどで明らかにしていく。 本研究の最終的な目的は、脂肪由来幹細胞などの体性幹細胞の治療の有効性と限界をみきわめることと、ヒトへの応用である。分化能力の由来などを解明し、より安全かつ有効な細胞移植治療法へと導くことである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脂肪幹細胞研究に必要な細胞の購入。細胞の培養、分化誘導に必要な培養液やプラスチック製材。病理切片作成、MDM2やp53免疫組織化学染色及びWestern blot用抗体、H-E染色、試薬の購入。日本再生医療学会、アメリカ整形外科学会の学会参加費、論文の校正及び投稿費に使用予定である。尚、本年度MDM2抗体購入を予定していたが、納入が間に合わなかったため、その分の予算が次年度に繰越となった。
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[Journal Article] TNF-α and tumor lysate promote the maturation of dendritic cells for immunotherapy for advanced malignant bone and soft tissue tumors2012
Author(s)
Miwa S, Nishida H, Tanzawa Y, Takata M, Takeuchi A, Yamamoto N, Shirai T, Hayashi K, Kimura H, Igarashi K, Mizukoshi E, Nakamoto Y, Kaneko S, Tsuchiya H.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7
Pages: e52926
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Multicenter Study of Caffeine-potentiated Chemotherapy for Bone and Soft Tissue Sarcoma2012
Author(s)
Hayashi K, Tsuchiya H, Takeuchi A, Otsuka T, Hoshi M, Ieguchi M, Chosa E, Sakamoto T, Tajino T, Yamada H, Yokouchi M, Sakayama K, Kidani T, Isobe K, Maehara H, Tome Y
Organizer
9th Asia Pacific Musculoskeletal Tumor Society Meeting
Place of Presentation
Hilton Kuala Lumpur (Malaysia)
Year and Date
20120907-20120909