2012 Fiscal Year Research-status Report
脊髄虚血神経保護における抗炎症薬の臨床応用に関する研究
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23791707
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山下 敦生 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50379971)
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Keywords | 脊髄虚血 / 炎症反応 |
Research Abstract |
胸腹部大動脈瘤手術後に生じる脊髄虚血(対麻痺)は、様々なモニタや術中管理の改良により減少傾向にあるものの、その発生を完全に防止できないのが現状である。特に近年、手術後遅発性に対麻痺が生じる割合が増加傾向で、その原因として術後発症した脊髄虚血(低灌流、塞栓などが原因)の他に、術中生じた虚血の病態進行による遅発性神経細胞死が考えられている。遅発性神経細胞死の機序として炎症反応の関与が示唆され、炎症性サイトカインの制御が脊髄虚血保護に働く可能性がある。 平成23年度に安全性を確認した抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)を用いて脊髄虚血保護に有効か検討した。家兎脊図虚血モデルを用いて、家兎(2.5kg)にインフリキシマブ 5、10mg/kg(臨床投与量3~5mg/kg)と生理食塩水(対照群)を各3羽ずつ1時間かけて投与し、腎動脈下の大動脈を15分間遮断して脊髄虚血を作成した。7日間飼育し後肢運動機能を毎日観察し、その後灌流固定を行い脊髄標本を作成した。結果は5段階に分けた後肢運動機能評価(0麻痺、5正常)で対照群で0:1羽、2:2羽に対し、インフリキシマブ 5mg/kg群で0:1羽、1:1羽、3:1羽、10mg/kg群で0:2羽、4:1羽とインフリキシマブの有効性は見出せなかった。その原因について投与量が少ないことが考えられるが、本研究の趣旨として臨床可能な薬剤を臨床量で投与して有効性が得られないことには、臨床応用が不可能であるから、これ以上の投与量増加は行わないこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、当初の予定通りインフリキシマブ投与による脊図保護効果について検討できたが、結果は無効で次の計画を遂行しなければならないから
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Strategy for Future Research Activity |
インフリキシマブの有効性が得られなかった場合に考えていた計画に準じて、アナキンラ(IL-1受容体拮抗体)投与による脊髄虚血保護効果の検討を家兎の脊髄虚血モデルを用いて行う。生理食塩水投与群をコントロールとして薬剤投与群と比較する。経時的な神経学的所見(後肢運動機能、感覚機能)を観察した後、再灌流後7日目に灌流固定を行い、病理組織学的検討を行う。また、薬剤の有効性と作用機序の判断のため、脊髄組織標本の免疫染色によるミクログリアの活動性評価を併せて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画していた本年度のインフリキシマブの脊髄虚血保護効果の研究において、予定していた実験動物数より少なく結果が得られたため392,094円の未使用額が生じた。 この未使用額については、次年度の実験に使用する家兎(1万円/羽)やアナキンラ(20万円/本)や麻酔薬、消毒剤、家兎飼育費、標本代に使用する。また、研究内容報告のための学会旅費にも一部使用予定である。
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