2011 Fiscal Year Research-status Report
"高脂肪栄養環境"が次世代に与える影響―エピジェネティクスの視点から
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23791830
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
梅川 孝 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80422864)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 胎児プログラミング / 母体高脂肪栄養 |
Research Abstract |
本年はわが国の妊婦における脂質摂取状況の実態調査と、脂質摂取の増加が母体のインスリン抵抗性へ与える影響についてマウスを用いて検討した。1. 妊婦のエネルギー摂取状況に関する実態調査合併症の無い標準体格妊婦(BMI: 18.5以上、25未満)156例を対象とし、妊娠各時期(初期・中期・末期)におけるエネルギー摂取に関する実態調査を行った。その結果、脂肪エネルギー比率が30%以上の症例を、初期に58例(37.2%)、中期に65例(41.7%)、末期に68例(43.6%)に認めた。2.脂質摂取の増加が母体のインスリン抵抗性へ与える影響脂肪エネルギー比率10%のコントロール餌(以下C)または脂肪エネルギー比率60%の高脂肪餌(以下H60)を与えた妊娠17日目の雌性野生型マウスを対象に、ブドウ糖およびインスリン負荷試験を行った後、母獣の皮下および内臓脂肪を用いて細胞面積、マクロファージの浸潤および炎症性サイトカインの遺伝子発現について検討を行った。その結果、H60群(n=7-10)はC群(n=7-10)と比較し、耐糖能とインスリン感受性の低下を認めた(各p<0.05)。さらに、H60群の皮下および内臓脂肪ではC群と比較して脂肪細胞面積の肥大化を認め、M1 (pro-inflammatory)マクロファージ優位のマクロファージ浸潤およびM1マクロファージマーカーであるMCP-1、IL-6、TNF-αの遺伝子発現が亢進していた(各p<0.05)。以上より、わが国の妊婦において非妊娠時同様の脂質摂取が行われており、脂質摂取量の増加は母体のインスリン抵抗性増強に関与することが示された。今後は、このような母体の子宮内で胎生期を過ごした仔がどのような表現型を呈するかに注目して検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の研究によりわが国のいわゆるローリスクとされている妊婦における脂質摂取状況がはじめて明らかになった。また、脂質からのエネルギー摂取が母体のインスリン抵抗性へ脂肪細胞の炎症の亢進を介して影響を与えることが明らかとなった。これら知見は今後の研究をすすめる上で重要であり、計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年に得られた知見に基づいて、今後は高脂肪餌を負荷したマウスから出生した仔の表現型の解析をすすめることを計画している。われわれはすでに予備実験において、高脂肪餌を負荷したメスマウスを妊娠、出産させ、通常食を与えた母獣に授乳させる実験系を確立することに成功している。この実験系を用いて、母体高脂肪栄養が次世代へ与える影響について検討を進めて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年は、上記計画を達成するために実験動物の購入、高脂肪餌の調整/購入、マウスの血圧および糖脂質代謝関連因子の検討を行うためのアディポサイトカイン測定やその遺伝子発現検討、脂肪組織および膵臓等の形態学的検討を行うために用いる試薬、備品の購入を行うことを計画している。
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Research Products
(5 results)