2011 Fiscal Year Research-status Report
アラーミン概念に基づく2光子レーザー顕微鏡を用いた壊死性腸炎の病態解明と治療戦略
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23792027
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小池 勇樹 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10555551)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 2光子レーザー顕微鏡 / 壊死性腸炎 / アラーミン / 敗血症 |
Research Abstract |
本研究では、2光子レーザー顕微鏡によって、現在までに研究してきたDSS大腸炎モデルやbacterial translocationモデルの作成・観察の実験経験を活かし、NECモデルの作成・観察を行う。これは同一個体でのNECにおける病理組織学的変化のリアルタイムイメージを提示するという画期的なモデルとなる。この際に、NECモデルではLPSを静注することにより、微小循環不全・微小血栓が惹起されるが、二光子レーザーのTissue penetrationを利用することで、腸管の漿膜面からの観察で、腸管粘膜レベルでのより詳細なリアルタイムな微小循環・微小血栓の評価を世界で初めて可能とすることを目標とする。さらにSelective laser irradiation to the endotheliumを行い、血管内皮層のみを障害することで、その領域に露出・放出されたアラーミン(HMGB1やNO)を特異的蛍光抗体を用いて、リアルタイムに同定し定量化を行う。この血管内皮選択的レーザー障害モデルとNECモデルにおけるこれらアラーミンの露出・放出の差異をリアルタイムに明らかにすると共に、同血管内皮障害部位をそれぞれMicrodissection法によりcDNA化し、分子レベルにおいてもこれらアラーミンの同定・定量化を行う。その上で、HMGB1の「悪」とされる側面に対し、抗DIC・抗炎症性に働くことが証明され始めたトロンボモジュリン等の新規薬剤や、近年欧米でも注目されている腸管の蠕動運動亢進作用と腸管選択的な血流増加作用を併せ持つ大建中湯等の薬剤を用いて、NECにおける治療効果だけでなく予防効果をも、分子レベルの解析だけでなくリアルタイムなin vivo解析と合わせることで、より信頼性の高い薬剤効果判定を可能とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに壊死性腸炎モデルで使用するLPSを投与による、より簡便な敗血症マウスモデルを作成し、この急性期における腸管微小循環の観察・解析をすでに完了した。さらに腸管壁におけるPost capillary venuleの部位を同定することに成功し、同部位においてNeutrophil extracellurar traps(NETs)の形成過程と考えられる変化がリアルタイムイメージとして確認できている。(蛍光色素抗体投与などによる確認作業は未施行)この致死量LPS投与による急性期の変化では、腸管壁内のPost capillary venuleにおいては、Leukocytes rollingやAdhesionなどのLeukocytes-Endothelial interactionだけでなく、血管壁に接着した白血球上にさらに血小板が接着・凝集していく変化がリアルタイムで観察・解析(血小板1個単位で)可能となった。また、同時間軸において、他の毛細血管や漿膜面での血行動態(血流やShare rate等)も同一個体において、観察・解析可能となっている。これらの変化を時間軸で比較すると、致死量LPS投与より数時間以内では、毛細血管や漿膜面での血管では特に変化は見られないものの、Post capillary venuleにおいては、白血球・血管内皮細胞・血小板による微小血栓もしくはNETs形成というダイナミックな変化が起こっていることが判明した。これまでの研究では、腸管壁における漿膜面でのFunctional capillary densityが粘膜面や粘膜下層の微小循環を反映するという報告がされてきたが、今回の結果はこれらの変化よりも、より早期にPost capillary venuleで上記の変化が起こっていることを世界で初めて観察・解析することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、まだLPS投与のみの敗血症モデルを対象としているため、今後は、幼若マウスにおいて、LPS投与を行ったモデルだけでなく、さらにLPS+低酸素暴露による壊死性腸炎モデルを作成して、同モデルにおける生体内リアルタイムイメージングを実現可能とする。 昨年度までに敗血症モデルのPost capillary venuleにおけるLeukocytes, endothelium, plateletsによる相互作用、血栓凝集動態等はすでに解析済みなので、さらにこの敗血症モデルと壊死性腸炎モデルにおける相同性や差異を確認し、治療アプローチとして何が有効であるのかを検討し、実際に薬剤投与も同モデルにおいて同時に行い、同一個体における治療効果判定も実現する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は「現在までの達成度」に示したように、研究のメインとなる壊死性腸炎モデルの本格的な作成に至っていないため、未使用額が生じている。次年度は、引き続き、GFPマウスの購入とそのマウスを管理・維持するための費用や、壊死性腸炎モデルの作成に必要な機材・薬品の購入、2光子レーザー顕微鏡のメンテナンス費、新規レンズの購入、マウスを固定・カニュレーション・観察するための物品費等における研究費を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)