2012 Fiscal Year Research-status Report
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23792055
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂本 好昭 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10464835)
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Keywords | 肥厚性瘢痕 |
Research Abstract |
当該年度の目標としては、前年度の研究成果を基に、細胞の応答メカニズムと各種ケミカルメディエーターの肥厚性瘢痕モデルにおける機能について解析することであった。そして伸展刺激を与えた皮膚の組織学的解析において、これまでは皮膚深層に存在する真皮細胞が筋線維芽細胞(SMA陽性)へ分化することにより外部からの張力を緩和し、損傷部位の離開を防ぐ。つまり真皮細胞が皮膚組織としての張力応答を担っていると考えられており、皮膚張力応答に纏わる研究は、この真皮線維芽細胞の張力応答に焦点が絞られていた。 今回、持続的張力負荷により、表皮細胞は著しい過形成を起こすし、真皮内筋線維芽細胞が抗張力を発揮すべく張力と同方向に走行するのと対照的に、表皮構造は垂直方向に成長していくという興味深い所見を発見することができた。これは肥厚性瘢痕が上下方向にも成長していく一つの原因と考えられる。さらには、動脈平滑筋細胞などが張力に応じて発現するSmooth muscle actinが、真皮筋線維芽細胞のみならず、表皮細胞にも強く発現し、さらには表皮基底層より上層、つまり終末分化に近い表皮細胞(Keratin5陰性)で強く発現することを見出した。これらの知見は真皮線維芽細胞だけではなく表皮細胞にも張力応答反応が存在するという、これまでの皮膚張力応答メカニズムの理解に関して全く新しい知見を示唆する所見を得ることができた。 さらに申請者らは現在のところ、マウスでのモデル動物の作製に成功しているが、マウスの皮膚はヒトのそれよりも伸展性が高いことが問題であった。本年はよりヒトの皮膚構造に近いブタに対して伸展刺激を加え、あらたなモデル動物の作成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥厚性瘢痕部位に著明に増加すリンパ管と、T細胞サブセットとの相関関係の有無についての検討や各種ケミカルメディエーターの肥厚性瘢痕モデルにおける機能について解析した。着目するケミカルメディエーターを特異的に阻害する化合物、中和抗体などにつき① 肥厚性瘢痕形成過程に投与することで肥厚性瘢痕形成に影響がみられるかどうか、②肥厚性瘢痕形成後に投与すると肥厚性瘢痕は変化するか、の2点につき検討した。そしてマウス以外の動物、具体的にはよりひとに近い皮膚構造を持つブタを用いた際肥厚性瘢痕モデルを新たに作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス、ブタの動物モデルを用いて肥厚性瘢痕部位に著明に増加すリンパ管と、T細胞サブセットとの相関関係の有無についての検討や各種ケミカルメディエーターの肥 厚性瘢痕モデルにおける機能について解析する。着目するケミカルメディエーターを特異的に阻害する化合物、中和抗体などを肥厚性瘢痕形成過程に投与することで肥厚性瘢痕形成に影響がみられるかどうかにつき検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
薬剤投与による肥厚性瘢痕形成への影響を検討するために引き続き、モデルマウスだけでなく新たに作成したブタでの解析を行う。またこれまでの研究成果に対して、学会発表や英文雑誌への投稿を行っていく。
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Research Products
(5 results)