2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792055
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂本 好昭 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10464835)
|
Keywords | 肥厚性瘢痕 |
Research Abstract |
当該年度の目標としては、前年度の研究成果を基に、細胞の応答メカニズムと各種ケミカルメディエーターの肥厚性瘢痕モデルにおける機能について解析すること、さらにこれまでに得られた結果を国内外の学会にて報告することであった。 これまでにマウスでのモデル動物の作製に成功し、それを用いた研究を行ってきているが、マウスの皮膚はヒトのそれよりも伸展性が高いことが問題であった。昨年、申請者らはよりヒトの皮膚構造に近いブタに対して伸展刺激を加え、あらたなモデル動物の作成に成功した。本年は主に伸展刺激を与えたブタ皮膚の組織学的解析をおこなった。その結果、瘢痕の厚さに依存して、CTGF(connective tissue growth factor)の濃度が上昇していることが確認できた。CTGFは組織修復や細胞増殖、さらには血管新生に関わる重要なサイトカインであり、皮膚を含む組織の線維化に強く関わると考えられている。またCD3陽性細胞の上昇も認められた。CD3陽性細胞はTGF-βの誘導にも関与しているとされる。TGF-βが線維化を誘導しCTGFが線維化を維持するという報告もあり、線状肥厚性瘢痕においても同様の機序が考えられる。また動脈平滑筋細胞などが張力に応じて発現するSmooth muscle actinが、真皮筋線維芽細胞のみならず、表皮細胞にも強く発現し、さらには表皮基底層より上層、つまり終末分化に近い表皮細胞(Keratin5陰性)で強く発現することを見出した。 本年までに得られた結果は、国内において形成外科医、創傷治癒を専門とする学会にて発表を行った。なお国外学会に関しては隔年の開催であったため、来年度に発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスだけでなく、新たに作成したブタを用いた肥厚性瘢痕部位でのT細胞サブセットとの相関関係の有無についての検討やCTGFをはじめとした各種ケミカルメディエーターの肥 厚性瘢痕モデルにおける機能について解析した。 またこれまでの結果を複数個の学会にて報告を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
CTGFの発現濃度が肥厚依存性であるという新たな事実が確認できた。しかしながら皮膚切除、皮膚延長などの物理的な刺激とCTGFとの関連は明らかでなく、CTGFの発現よりも前の段階に影響する可能性が完全に否定できない。 TGF-βが線維化を誘導しCTGFが線維化を維持するという報告もあり、このTGF-βの発現にはT細胞が関与している。以上のことから、物理的刺激がT細胞を誘導、TGF-βを発現させ、その刺激がCTGFを誘導しているという仮説が成り立つ。この仮説の証明のために、着目するケミカルメディエーターを特異的に阻害する化合物、中和抗体などにつき① 肥厚性瘢痕形成過程に投与することで肥厚性瘢痕形成に影響がみられるかどうか、②肥厚性瘢痕形成後に投与すると肥厚性瘢痕は変化するか、の2点につき検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物を当初の予定であったマウスだけでなく、大型のブタでも行うこととした。そのため動物の飼育費等が予定していた額よりも上回ることとなったために、次年度予算の一部の前倒し支払い請求を行った。飼育費等の確定金額が、前倒し請求を行った日よりも後日に判明するため、少し大目に申請していたことが、次年度使用額が生じた理由である。 次年度の予算の一部がすでに本年度使用しているために、次年度使用額が生じていても、全体としては予定予算よりも減じている。これを考慮して運営していく。
|
Research Products
(3 results)