2011 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞によるアポトーシス細胞貪食:分子機構と病理学的意義
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23792099
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アポトーシス / 貪食 / 口腔癌 / MFG-E8 |
Research Abstract |
本年度は以下の実験を行った。1) 口腔扁平上皮癌におけるアポトーシス細胞貪食関連分子MFG-E8の免疫組織化学的検索:口腔扁平上皮癌53症例を対象にMFG-E8の発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、全例において非腫瘍部の口腔粘膜上皮はMFG-E8非陽性であったのに対し、44例(83%)で癌細胞にMFG-E8陽性が認められ、浸潤先端部でMFG-E8陽性が強調されていた。53症例をMFG-E8高発現腫瘍・低発現腫瘍の2群に分け、臨床病理学的因子との相関を検討したところ、MFG-E8高発現群は低発現群に比べて腫瘍径・浸潤距離が有意に大きく、術後再発率も高かった。さらに、アポトーシスをきたした癌細胞はMFG-E8強陽性を示し、その一部は生活癌細胞の細胞質内に取り込まれていた。2) 口腔扁平上皮癌細胞株におけるMFG-E8の発現解析:口腔扁平上皮癌細胞株(ZK1, ZK2, MK1)におけるMFG-E8発現を検索したところ、いずれの細胞株でもMFG-E8の遺伝子・蛋白質発現が確認された。MFG-E8は主に細胞質および細胞膜表面に局在しており、特に核分裂細胞で強調されていた。さらに、si RNA導入によりMFG-E8発現を抑制すると細胞増殖が低下することが明らかとなった。3) 試験管内アポトーシス細胞貪食実験紫外線照射によりアポトーシスを誘導したJurkat細胞を、MFG-E8高発現株ZK2細胞に添加して、ZK2細胞によりアポトーシス細胞が貪食されるかを検討した。24時間の共培養後、ライソゾームマーカーLAMP-1の免疫細胞染色を行った結果、アポトーシス細胞はZK2細胞のライソゾーム内に取り込まれていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔扁平上皮癌において、貪食されたアポトーシス癌細胞に一致してMGF-E8の発現を確定しえたので、まずは仮説の基本部分の証明ができ、研究計画が妥当であったと評価される。さらに、MFG-E8発現の臨床病理学的意義、とくに癌細胞増殖・進展への関与もできたことから、当初の計画どおりに実験成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果によって、当初の研究方向性に変更なく、次年度も実験を進めたい。具体的には、MFG-E8が癌細胞同士のアポトーシス細胞貪食に関与する可能性について、直接的な証左を得ることを目標とし、Jurkat細胞を用いた貪食実験系で、MFG-E8発現変動による癌細胞のアポトーシス細胞貪食機能を検定し、さらに、アポトーシス細胞貪食が癌細胞の増殖・遊走・浸潤に及ぼす影響について解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の検討は培養細胞実験が主体となるため、細胞培養や遺伝子・蛋白質発現解析に用いる実験試薬、プラスチック器具などの購入に消耗品費として使用する予定である。その他、学会での研究成果公表、学外専門家との研究打ち合わせのために国内旅費も計上している。
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